人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子56歳。

勝手にふるえてろ / 綿矢りさ

小説を読むと、ストーリーの展開だけでなく、「言い回しが面白い」というような作品に出会うことがある。

これもそんな本の中のひとつであった。

言葉とは、あまりこねくり回すと伝わりにくく、また鼻についたりすることがあるが、共感する部分があった時の心地良さがたまらなかったりする。

苦手なラブストーリーだったが、波長が合ったのでとても楽しんで読んだ。

腐女子であることを表に出さず、経理課で黙々と働くOLヨシカ。

中学生の時の初恋の相手「イチ」、猛烈にアタックしてくる営業課の「ニ」との間で、気持ちは揺れ動いていた。

最愛だけど、到底添い遂げられそうもない「イチ」。

全く愛していないのに結婚するかもしれない「ニ」。

ヨシカの言い方だと彼氏はこのふたりで、あたかも二股をかけているような体になっているが、実は本命のイチとはスタートラインにすら立っていなかった。

それでも中学の頃の思いを重く引きずり、絶対に彼じゃなきゃダメだと思い込んでいる。

そこへニの猛アタックだ。

ある意味こちらもまだスタートラインに立っていないのだ。なら、付き合ってみないとわからない部分だってあるかもしれない。

ヨシカは揺れる。

これだけなら、単なるラブストーリーになってしまうが、イチへの異常なまでの思い入れ、それと対照的にニに対する辛辣なジャッジ。

傍から見ると、イチにもニにも、「なんでそんな人を」という気持ちになってしまう。

時に女性は、恋愛において優柔不断になる。

真剣になれば、過剰に反応して失敗をする。

そんな極端な例がヨシカだ。

ハッピーエンドか?

分からない(笑)

もう一編、「仲良くしようか」という短い話が入っていたが、こちらはサッパリ全然意味が分からなかった。

サッパリ全然ですはい。

ぽ子のオススメ度★★★★☆(「仲良くしようか」を抜きで)

「勝手にふるえてろ」綿矢りさ

文春文庫