人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子56歳。

浦安の宮内さん

亀戸から舞浜まで歩いたのは、まだ1週間前のことか。

ずいぶん経った気がしていたが、この頃忙しいので感覚がおかしくなっている。

あの時、歩きながら、思い出したこと。を、思い出したのだ。

舞浜が近くなって来て、「浦安」という言葉が浮かんできた。

そういえば、浦安に引っ越した宮内さんはどうしてるんだろう。

宮内さん。

私が小学生の頃、母の知り合いに宮内さんという人がいたのだ。

私と同い年の女の子がいて、学区は違っても比較的近い場所に住んでいたので、時々母と遊びに行ったことがあった。

そして私が小学校4年生の時に、猫を譲り受けたのである。

宮内さんの家には当時2匹の猫がいて、浦安に引っ越す機会に、後から拾って来た子の方を誰かに譲りたいと考えていたそうだ。

もしかしたら、一軒家に引っ越したばかりだった我が家にどうか、と持ち掛けたのかもしれない。

こうして「ミーちゃん」がうちの家族となったのだが、程なくして宮内さんは浦安に引っ越し、その後一度泊りに行ったきり、私は付き合いがなくなってしまった。

母はどうしたかは分からない。

その後何度か名前は聞いたかもしれないが、少なくとも晩年にはもう、付き合いはなくなっていたと思う。

そんな宮内さんのことを、舞浜に向かいながら思い出したのであった。

宮内さんは、母の死を知らないだろう。

譲り受けたミーちゃんも、とっくに死んでしまった。

母の、ミーちゃんの死が知られることがない事実に、悲しくなった。

人の一生なんて、儚いものだ。

家族である私ですら、母の人生のほんの一部しか知らない。

死んでしまったら、あとは風化していくだけなのだ。

その「死」すら知られぬままに風化していく存在。

そもそも宮内さんだって、今どうしているのだろうか。

それを知る術はない。

どなたか、母の死を伝えてくれませんか。

浦安の、宮内さん。

分かるのは、それだけである。