左手の人差し指に、マメができた。
マメの中にもうひとつ、マメができている。
リッケンバッカー。
カシオペア。
ダンナがまるで私に挑むように「弾けやしない」と言った、ビートルズのベースパート。
あまりに曲名が長いので最近は強引に「ホワマイ(ホワイルマイギタージェントリーウィープス、の事である)」と略しているが、私はリッケンバッカーベースを賭けて一生懸命練習していた。
まだ完成までは遠いが、正直、弾けない曲ではない。
ダンナはリッケンは中古で5、6万ぐらいと踏んでいたようだが、実際にはその3倍であった。
こんなに練習しているのだ、いずれ弾ける気でいるが、その時「高いから無理」などというオチは絶対に嫌である。
練習開始から1週間ほど経った土曜日、私は飲んだ時に聞いてみた。
「リッケンバッカー、かなり高そうですが、もし私が弾けたらどうなるんですかね?」
「・・・高いね(笑)あんなにするとは思わなかったよ。」
ヒクッEE:AEABF
「じゃああの話はナシなの?!」
「い、いや・・・、あの、ぶー子が卒業してからとか・・・。」
3年後!?EE:AE4E5
私のこの練習は、3年後の、あるかどうかもわからない約束のため!?
「ちょっと待ってよ、高いのは分かったけど、じゃあ何か妥協案を、例えばもうちょっとハードルを上げるとか、1週間で弾けるとか・・・。」
「一週間!!」
ダンナはムリムリ、と言ってカカカと笑った。
もちろん1週間なんてものの例えであったが、そこまで無理か!?
正直私はそれまでの練習で、結構いい感触を掴んでいたつもりであった。
なのにダンナの評価はこれなのである。
「じゃあEE:AE4E5、リッケンバッカーの件はちょっと置いといて、もし1週間で弾けたらカシオペア旅行ね。」
もちろんちょっと置いといたリッケンの件もしっかり継続するつもりだが、
*弾けやしない
*1週間でなんて弾けない
・・・と、2件に渡ってナメられているのである。
こうなったらその言葉それぞれに、後悔していただきたい。
ダンナは「はぁ?」とは言ったが、旅行やベースも悪くないと思っているのか絶対無理だと思っているのか、意外とあっさり了承した。
ただし旅行は、ぶー子の卒業旅行となった。
しかしフフン、言わなかったが、ベースの方は即いただくつもりである。
耳コピくんにベースを繋ぎ、曲と共に弾く。
すると、ビートルらが私のベースに合わせて弾くという状態になる。
私はこのところ毎夜、ゲームすら忘れて練習していた。
ダンナはその横でネットやらゲームやらやっている。
私の練習は丸聞こえなのに、まるで気にもかけない。
一体どうなんだ?私の演奏は・・・。
「力、入ってるね。親指はもういらないぐらいだよ。こっちの指だけで押さえられるようになれば、そんなに力はいらないはずだから。」
昨日やっとダンナが口を開いた。何、その余裕EE:AEB64
「・・・もうすぐ弾けそうな気がしてるんですがEE:AE4E5」
「ハハハ、音が出てればいいってもんじゃないでしょ?」
・・・音が出てるだけ・・・なのか、私の現状は。
あと4日。
マメが痛くて弦を押さえるのが辛い。