比較的、昨日は良く眠れた方だ。
天気もいい。
娘ぶー子は学校が休み、静かな午前である。
私は何度も庭に出る誘惑に駆られたが、もっとやらなくてはならない事を先に済ませなくてはならない。
なぜなら、ひとたびそこに出たら、昼まで戻れない気がしたからだ。
我が家は片付けなくてはならないところと、掃除しなくてはならないところの宝庫なのだ。
常に色んな部分に支障をきたしている。
特にこの頃は寝不足でやる気がなく、汚くて不便な家となっていた。
なので、今日はキッチンの棚の整理をした。
流しの上にあるその扉を開けると、カップ麺やらパスタやらカレールーやら、さまざまな物が乱雑に積まれ、なだれを起こしつつある。
実際に何度か起こったが、結局また適当に放り込むので、いつまで経ってもデンジャーゾーンなのだ。
この棚だけでイヤになってしまった。
10時半。あと30分か。もういいだろう。
私は庭へ飛び出した。
カタバミめ。
昨日は最後の晩餐を楽しんだか?
いよいよお前達を根こそぎ葬る時が来た。
私は、奴らが一番進出してきている場所に座り込んだ。
一面カタバミの絨毯である。
これがきれいになくなるのだ。さぞかし気持ちが良い事だろう。
狩猟本能が唸る。
攻略は「根から抜け」、ただこれだけの事である。
イモヅル式に剥がれていくはずだ。
コチョコチョ。
根は芝の下に潜り込んでいる。
適当にほじくると、赤くて太い根が走っている。
メリモソ!!
快感だ。このメリモソというイモヅル感がたまらない。
しかしだ。
それにしても良くここまで生えたものだ。
あまりにも良く生い茂っているので、葉が邪魔でなかなか根が見つけられない。
びっしり生い茂った葉をかき分けると、今度はしっかり根付いた芝がいるのだ。
セコムも驚きの厳重さである。
その上、繰り返すがあまりにも良く生い茂っているので、抜いても抜いても減っていかないのだ。
こいつら・・・。
FUCK!
しかもこれは何だ!?
たわわに膨らんだ種の袋が、大量に仕掛けられている。
これらは近くの根が抜ける刺激で、パン!とはぜる。
その度に大量の種が焼夷弾のように芝に降り注ぐのだ。
メリモソ!
パン!
メリモ・・・、
パン!!
メリパン!!
これでは種まきだ。
一度にこんなに蒔かれてしまうのだから、機械並みの大量生産、間違いなし。
私は種の方から抜いてやろうと思ったが、残念ながら種は根とは直結していない。
なので種だけを単体で千切ることになるが、何たる非効率。
しかも引っこ抜こうと思って茎をつかむだけで、爆発する。
見渡すと、タネ大砲(みなさん、FFは頑張ってますか)も果てしなくカタバミの中に広がっている。
ダメだ、きりがない。
わかったよ、・・・蒔きな。
そしてこの大地に生を受け、根を生やし、・・・私に抜かれるが良い。
しかし、種以上に葉が一面に生い茂っているのだ。
根を探し当てるのも困難を極め、私は心の中で「根読み師」という称号を作り出し、それを欲した。
・・・負けだ。
私は完全に負けた事を悟った。
30分で、見た目には何も変わらなかった。
大量の種が蒔かれただけだ。
くそ~、一部はもう枯れかかっていたから、放っておけばそのうち勝手に自滅するだろう。
逃げるんじゃない。
アイシャルリターン、私はまた来年、ここに戻る。
種が育つ前に。
雑草如きに手も足も出ず、ノコノコ引き下がったのだが、完全な敗北だ。
・・・カタバミ。
覚えておこう。
なかなか骨のあるヤツだ。
フッ。