ダンナが帰ってくるまで、まだ時間がある。
風呂に入ってしまおう。
手抜きバージョンだが風呂を洗い、新しい入浴剤を入れ、すっかり酒も抜けて何となく気分の良い夜であった。
風呂から上がって体を拭いていると、リビングから「ギャオーン、ギャオーン」とエルが叫ぶ声が聞こえてきた。
獲物を捕まえた時の声である。
完全な家猫のエルの獲物とは、ビニールの類だ。
ポケットティッシュだとか、レジ袋だとか、大きさは問わず、なぜかビニールである。
それらを捕らえると彼女は、誇らしげに見せに来るのである、「獲ったど~!!」と叫びながら。
それにしても醜い声である。
小柄で愛らしい姿とは正反対の、ひどいダミ声なのだ。
なのでそんな声で叫ばれるとこっちもじっとしていられず、つい駆けつけてしまうものである。
なので私は体を拭く手を止め、小さくドアを開けてエルを呼んだのだった。
20センチほどの小さな隙間からは、エルの姿は見えなかった。
おかしいな、いつもならすっ飛んでくるのに。
「エルー!!」繰り返し呼ぶが、先日のバカ騒ぎで私の声もエルに負けず劣らずしゃがれていた。
やがてトトト・・・、という軽快な足音と共に、20センチの隙間の右から現れたのは、黒猫大五郎であった。
彼は縦長に開いているドアの隙間のちょうど真ん中で立ち止まり、私から目を逸らさずにブッと丸めた針金を口から吹き出した。
私は可憐なエルがビニールをくわえて「ママぁ」という感じで現れるのを待っていたのに、アホヅラのダイが立ち止まったまま針金を吹き出したので爆笑した。
彼も彼なりに、獲物を自慢したかったのだろうか。
さて、気持ちの良い夜だが、週が明けても家事の方は滞っている。
昨日は二日酔いでかったるかったので、「二日酔い休暇」とした。
「もう何にもやらねえ」と決めた時のすがすがしさと後ろめたさ、それらをごまかすように布団に逃げること、久しぶりであった。
結構頑張ってると評価しても良い頃じゃないか。
そう思うと早速飲みたいぞ今夜。
ビール、スタンバイ。
今日は今日で残業だ。
ちゃんと手帳に30分刻みの家事スケージュールも書き込んであったが、こいつは不可抗力。
そして、明日もあさっても忙しそうである。
もう今週の家事は投げようかと思案中。
ビール、スタンバイ。
しかし飲むなら、ダンナに早く帰ってきてもらわなくてはならない。
せっかく飲み始めても1時間しかない、なんて言うんじゃ無駄酒である。
コップ1杯だけのビールなら、飲まない方がマシだ。
と言う事で、ダンナ次第である。
昨日は休日並みのダラけようだったので、ポジション的には月曜日の今日である。
水曜に次ぐ、誘惑の日であった。