金曜の夜の事だ。
例によって飲んでひとり残され、ノコノコと出掛けていったのだ、あの世界へ。
今回はあれ以来音沙汰のない「暫定カレシ」のところへ飛んだ。
ヤツ、私が「リアルでもデブです♪」と言ったらそれっきりなのだ。
バーチャルを楽しめない男め。
暫定カノジョが乗り込んでやる。
「出た~~~!!」
1ヶ月ぶりぐらいにはなっているだろう。
それで最初の言葉は「出た!」である。
今回彼は友達を連れていた。
聞くと初めて来たらしい。
ちょうどいい。
「初めまして、私とつき合ってるんです。」と挨拶をしたが、暫定カレシは「違う」「違う」と必死である。
「だったらアナタ、つき合ってください。」
その友達に言うと、「いいですよ。」と呆気なく答えた。
いいですよ。
いいですよ。
いいですよ・・・・・。
あぁ、なんて甘い響き。
この世界で私を受け入れてくれた初めての人・・・。
しかし頼んでつき合ってもらうとは、まだまだ情けない領域である。
いつか誰か私の前で跪かせてみせる。
彼らと別れて、今度は久しぶりに他人の中に入る事にした。
ゲームの宣伝の大画面の前に立っている人。
ちょうど人ひとり分ぐらいの隙間を空けて立ってる二人がいたので、黙ってそこに割り込んでみた。
無反応である。
しかし「こんばんは。」とつぶやくと左隣はすぐに逃げた。
右隣はその後ずっとモニターを見ながらゲームの話をしてくれたが、彼のアバターは黒人であった。
マイノリティ同士の交流である。
彼もこの世界で差別にあったことはあるのだろうか。
「アバター、変えたら?」
旧暫定カレシに言われたが、バーチャルだからこそできることがあるのだ。
それなら私はあえて負の道をいきたい。
今後も「デブでブサイク」で交流をしていきたいと思う。