その後、私はダンナの姿のまま、バーチャルワールドで上司アンガと会った。
驚いた事に彼もダンナにそっくりの姿かたちで、大笑いである。
恐らく面倒がってあまり手を加えないでいると、あのような人物になるのだろう。
実はあれは正月でヘベレケに酔っていたので、あまり記憶にない。
しかし、何とかして自分のアバターを作ろうと心に決めた事は確かだ。
それから私は新しく自分のIDを登録し、コツコツと私らしいアバターを作成した。
「渾身のアバターが出来ました。会いたいです。」
早速私は上司アンガに申し出た。
可愛いのができたんです。
見に来てください。
・・・・・と言うのは嘘で。
デブでブッサイクな渾身の1発であった。
ミニスカートにプレイステーション・ホームのロゴ入りTシャツ、裸足。
「・・・これは・・・すごい。」
ゲーセンで待ち合わせた彼が、絶句した。
コントローラーでの入力なので、最短のセリフである。
そこで私は踊りまくった。
すると面白がって一緒に踊り出す人が出てきた。
すごいだろー、デブでブッサイクな踊りである。
その後彼はずっとゲーム機に座り、顔を上げなかった。
座るとそういうポーズになってしまうのかもしれないが、ブスのマイナス思考である。
この日彼は、リアルでは誕生日で彼女と一緒に過ごしていたので、早々に別れる事になった。
しかしこの時も私は泥酔していた。
なのでデブでブッサイクなまま外に繰り出したのだった。
酔った勢いでやりたい放題であった。
隣に座る、話しかける、輪に入る、踊る、独り言を言う。
出来る限りの事をやった。
そして分かった事。
優しいのは女の子である。
オトコはたいがい逃げるかシカトであった。
それに引きかえ、女の子の優しいこと。
ある人は踊りの仲間に入れてくれ、ある人はベンチで立ち上がる方法を教えてくれた。
しかし難しくて出来ずに「ブスだからできないのか?」と言うと、「そんなことないよ!かわいいよ!」と言ってくれた。
また別の場所でも「ブスだから・・・。」とヒネたら「かわいいよ!」と言ってもらえたのだ。
これに味をしめて、あちこちで「私はブスだから・・・」とヒネ回っていた。
決めた。
私はこのアバターで通す。
そしてここで、人間の表と裏を見るのだ。
週末に酔ったら出現のパターンができつつある。
そう言えば以前は酔うとチャットばかりやっていた時期があったな。
まぁ酔っ払いぽ子の相手など、ネットかゲームの世界でしかしてもらえないのだ。
あっちのどこかで見かけたらヨロシクである。