人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

冬の夜、犬と散歩で

中型犬の散歩は1日2回が理想だという。そんなにできるか不安だったが、案外すぐに定着した。

朝はダンナ、夕方が私。

どちらの時間帯も、季節によって明るい時期と暗い時期がある。今は暗い時期だ。ミッツの首に小さなライトをぶら下げて、歩いている。

明るい時間帯に出ることもできるが、とにかく他の犬に出会いたくないのである。ミッツが吠えまくるから。

明るい、暖かい、などと条件が良い程に、犬の出現率は上がるのだ。

私は暗くなってから、ひっそりと家を出るようにしている。

 

その日も、家を出た時にはすでにもう真っ暗だった。心なしかこの季節は、静かに感じるものだ。澄んだ空気の中、ミッツに引かれるように歩いて行く。

人もまばらだ。

私は道路際の細い歩道を、ミッツと歩いていた。

少し前を、若い女性が歩いている。はたち前後か。

膝ぐらいまであるロングコートに、たっぷりとしたパンツスタイル。ヘアスタイルはボブか。全体的にボーイッシュな感じ。どこか80年代を思わせるスタイルに、懐かしさを感じていた。

と、その時、ミッツがくしゃみをした。

へぶしゅ!!

・・・という実にオッサン臭いくしゃみであった。
すかさず前方の女性が、

「うわあッッ!!」

と言って、飛び上がった。まるでくしゃみに反応するおもちゃか何かのようだ。

彼女は「び、びっくりした!!」と言いながらこちらを振り向き、とっさに私は「す、すみません。」と謝る。

彼女はくしゃみの主が犬と知り、私はまた彼女の派手なリアクションに、大爆笑だ。

彼女は「犬、後ろ、びっくり」などと言いつつ、私は「すみません」を連呼しつつ、おかしくてたまらない。

ふたりしてゲラゲラ笑いながら、じゃあ、と別れた。

 

今でも散歩をすると時々このことを思い出し、ひとりで笑っている。

相変らずミッツのくしゃみはオッサン臭い。

また誰かの背後でかましてくれないか。秘かにその時を待っている。