ない。
ない。
ないないないないない!!
とうとうないのである。
ない、ということはこれまでに何度もあった。何度も何度も何度もあった。それでもそれは、ちゃんと必ず出てきたのである。
しかしとうとう、とうとう出てこないという時が来てしまった。
まぁ正直、よくぞ今までなくならなかったものだと思う。「ない」という事態は、平均すると月に2、3回は起こっていたのだ。それに対する私の予防措置は「気を付ける」、これしかなかったのである。ナメていた訳じゃない、他に思いつかなかったのだった。
なくなったのは、自転車の鍵だ。ちょっとは同情してもらえると思う。良く使うものなのにあんなに小さいなんて、紛失頻度も上がろうものである。
鍵類は、玄関のキーフックに掛けるようになっていた。自転車を降り、鍵を掛け、そのまま手に持って玄関に入り、フックに掛ける。失くしようがなさそうだが、「ない」となって探して出て来るのは、大概上着かズボンのポケットから。どのポケットに入れたか分からない、という面倒はあれど、毎度見つかってきたのであった。
もちろんその都度、もうこんなことにならないように気を付けよう、と心に決めた。気を付ける、とは「鍵を掛けました」「鍵を持っています」「フックに掛けました」という意識である(笑)心もとないが、これ以上どうしろと。玄関にキーフックを設置したのが最大で最後の「できること」だったのである・・・。
そして消えた。とうとう消えたのだ。
鍵はかかっているので、なくしたなら家の敷地内である。
ポケットは探した。普段着ていない服まで探した。バッグも探した。ひっくり返して全部見た。何度も見た。
玄関の隅々まで探した。
出てこなかった。
最後の頼みの綱、ハサミ様にもお願いした。20分ほどお頼み申した。
それでも出てこなかったのである。
最後に使ったのは、前日の昼だ。それほど時間が経ったわけでもないのにこうも見つからないなんて、これはとんでもないような思いもよらない形で消えたとしか考えられない。言うならば、奇跡だ。牛乳にたまたま菌が入ってヨーグルトが出来上がったというような類の、奇跡。ミラクル。
観念した。奇跡の前に人間など、なす術はない。
が、鍵は諦めても自転車を諦める訳にはいかない。あれがないと、本当に困る。
となると鍵をこじ開けるか交換するか。
お金を掛けたくなかったので、まずは自分でこじ開ける方法をネットで検索してみたのだ。
あるあるw 御覧なさい、自転車の鍵なんてすぐになくなるものなのよ。
しかし方法は、限られていた。
防犯上よろしくないので詳しくは書かないが、家に何本かあるアレをバキッとしてソレを取り出してコチョコチョする方法。バキッはダンナに頼み、コチョコチョは自分でやってみた。
開いたw
本当に開いた。
感動的だ。泥棒か鍵屋さんみたいである。つまり、その道のエキスパート。
こうして意外と早くケリがついたので、次の買い物にはまた自転車に乗って行くことができたのであった。
比較的近いスーパーに行ったのは、不幸中の幸いだろう。
自転車を停めたら、つい習慣でまた鍵を掛けてしまったのである(笑)
帰りは後輪を上げて家まで引いて行く羽目に。
普段乗っかって車輪を転がしてると気が付かないが、自転車、重いぞ・・・。
しかし上達して、鍵開けはものの数秒であった。
こんなことばかり上手くなって、いいやら悪いやら。
ということで今私の自転車の鍵は、掛けられずに開けっ放しだ。
盗まれないことを祈る。