人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

ドッペルゲンガー

午後6時半ともなると、もうとっぷり日が暮れて「夜」だ。

夕陽を目指していた頃もあったが、最近はあえてこれぐらいの時間帯を狙って散歩に出ている。敵犬、つまり他に犬の散歩をしている人が少ないからである。

この頃はミッツの激吠えもずいぶん良くなったが、何匹も一度にかち合うと、まだまだ非常にツライ状況だ。

夕暮れ時になると「日が暮れて寒くなる前に」とばかりに、いっとき散歩人口が増える時間帯があるのだ。それとかち合わないよう、遅い時間を選んでいる。

このタイミングだと私にはちょうど風呂上りに当たり、案外快適だったりするのだ。今では散歩に合わせて風呂に入るよう、調整するようになった。

これぐらいの時間になると、めっきり出会う犬はいなくなる。

油断した。

気が付くと前方に、敵が。

ミッツはまだ気づいていない。どうしようか。

細い遊歩道である。ミッツが敵とすれ違うには近すぎる。かと言って、ここまで接近してから方向転換では、あちらに失礼なような気もする。

左右に逃げ道はない。行くか戻るか。

困り果てて、足が止まってしまったのだ。その間にも、敵はこちらにどんどん迫って来る。こちらが激吠え犬だとは知らずに、普通にすれ違おうとしているのだ。

モタモタしている間に、ミッツが吠え出した。すかさず間に割って入る。トレーナーさんから教わった方法だ。

しかしもうすでに距離が近かったため、大人しくなる気配はない。立ち上がって吠えまくっている。

私はミッツと向かい合うよう、敵との間に立っていた。敵に背中を向けている形だ。

こうしている間に去っていくのを待つ訳だが、敵も応戦し、2匹で激吠え合戦となった。

「すみません。」こんな時は一応、ひと声かけるようにしている。お宅のワンコさんまで巻き込んでしまい、申し訳ない。

向こうもペコペコ頭を下げながら引っ張っていったが、ふと見えた敵犬が、なんと、びっくりするほどミッツにそっくりだったので驚いた。

ミッツがミッツに吠えている風景は、衝撃的であった。私はしばらくその光景を頭の中で再生して楽しんでいたが、ふと思い出した。ミッツにそっくりな犬がいると言われたことがあったのだ。

散歩で知り合った数少ない顔見知りが、間違えて混乱していた。

やはり良く吠えるそうである(笑)

あの子はきっと、その子に違いない。

また、会えないかな?

散歩の楽しみが、増えたのだ。

敵に、出会えますよう。