午後6時半ともなると、もうとっぷり日が暮れて「夜」だ。
夕陽を目指していた頃もあったが、最近はあえてこれぐらいの時間帯を狙って散歩に出ている。敵犬、つまり他に犬の散歩をしている人が少ないからである。
この頃はミッツの激吠えもずいぶん良くなったが、何匹も一度にかち合うと、まだまだ非常にツライ状況だ。
夕暮れ時になると「日が暮れて寒くなる前に」とばかりに、いっとき散歩人口が増える時間帯があるのだ。それとかち合わないよう、遅い時間を選んでいる。
このタイミングだと私にはちょうど風呂上りに当たり、案外快適だったりするのだ。今では散歩に合わせて風呂に入るよう、調整するようになった。
これぐらいの時間になると、めっきり出会う犬はいなくなる。
油断した。
気が付くと前方に、敵が。
ミッツはまだ気づいていない。どうしようか。
細い遊歩道である。ミッツが敵とすれ違うには近すぎる。かと言って、ここまで接近してから方向転換では、あちらに失礼なような気もする。
左右に逃げ道はない。行くか戻るか。
困り果てて、足が止まってしまったのだ。その間にも、敵はこちらにどんどん迫って来る。こちらが激吠え犬だとは知らずに、普通にすれ違おうとしているのだ。
モタモタしている間に、ミッツが吠え出した。すかさず間に割って入る。トレーナーさんから教わった方法だ。
しかしもうすでに距離が近かったため、大人しくなる気配はない。立ち上がって吠えまくっている。
私はミッツと向かい合うよう、敵との間に立っていた。敵に背中を向けている形だ。
こうしている間に去っていくのを待つ訳だが、敵も応戦し、2匹で激吠え合戦となった。
「すみません。」こんな時は一応、ひと声かけるようにしている。お宅のワンコさんまで巻き込んでしまい、申し訳ない。
向こうもペコペコ頭を下げながら引っ張っていったが、ふと見えた敵犬が、なんと、びっくりするほどミッツにそっくりだったので驚いた。
ミッツがミッツに吠えている風景は、衝撃的であった。私はしばらくその光景を頭の中で再生して楽しんでいたが、ふと思い出した。ミッツにそっくりな犬がいると言われたことがあったのだ。
散歩で知り合った数少ない顔見知りが、間違えて混乱していた。
やはり良く吠えるそうである(笑)
あの子はきっと、その子に違いない。
また、会えないかな?
散歩の楽しみが、増えたのだ。
敵に、出会えますよう。