人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

夢が教えてくれたこと

怖い夢を見た。

本当に恐ろしい夢で、私はしばらく布団から出ることができなかった。

夢で良かった、心から思う。

布団の中で、現実に感謝した。

ライブである。

そこはいつものライブハウスではなく、洒落たバー。お客さんにピアノを聴かせるお店であった。

そこで私が弾くのである。おかしいだろ、すでに。

練習はしてあった。しっかり弾く自信もあった。ただし2曲

あとはザックリ練習して、まぁ何とかなるだろうとその程度だ。

客席は1階。

ピアノは2階にあるのでお客さんの様子は分からないが、賑わっているのが伝わって来る。

演者は何人かいたので誰から弾きますか、と問われ、一番下手であろう自覚はあった私が名乗り出た。

サッサと済ませてしまおう。楽譜を開く。

渾身の1曲だ。淀みなく弾いたが、弾きながら、気付く。

・・・どうなん、この曲。

初級者向け練習曲、という感じの面白くも何ともないその曲を、私は上手に弾き切ったのである。

ここで自分の考えの浅はかさを知る。こんなん、バーのライブでやる曲ではない。「弾ける」ということに胡坐をかき、考えが及ばなかった。

1曲目と言うこともあり、お客さんは拍手をしてくれた。きっと何かがおかしいと思ったことだろう。2曲目はそうはいかない。

このまま練習してきた曲をやるのは危険だ。もっと客受けしそうな曲はないか。

暗譜ですぐに弾ける曲など、私には2曲しかない。レットイットビーとヘイジュードだ(笑)

ここは大曲、ヘイジュードをかましておこう。

私はピアノ一本で、ヘイジュードを弾いた。

ピアノが前面に出ているとは言え、バンド形態の曲である。これを歌もなくアレンジもなく、ピアノパートだけをピアノ一本で弾いているのだ。よりによって7分近い壮大な曲。

しかし客は、騙された。「ヘイジュードである」ということに騙されてくれたので、何かがおかしいと感じたかもしれないが、拍手喝采であった。

ホ。

何とか切り抜けたが、次どうする。さすがにこの後ピアノ一本のレットイットビーでは、魔法が切れるだろう。

困った。

持ち時間は何分だったか。最初に説明があったが、全然聞いていなかったのだ。さすがに2曲じゃ足りないか。

・・・逃げるか。

恐らく大ヒンシュクを買うだろうし、今後の信用問題にも関わる。

それならヘタクソでも弾いた方が、というか、2曲しか練習しなかったテメーが悪いのである。テメーの尻はテメーで拭け。

覚悟を決めて、持って来た楽譜を開く。

ちゃんと練習した曲はもう1曲あったが、それもピアノの練習曲だ。

ザックリ練習した方から、イチかバチかでいく。

リズム感の難しい、ラテン系の曲であった。

タンッ・タンッ・タッタータタンッという軽快なノリ。コード弾きなら何とかなるだろう。

使うコードは4つだけ。

私は両手全く同じリズムで、そのコードを繰り返し弾いた。

タンッ・タンッ・タッタータタンッ♪

タンッ・タンッ・タッタータタンッ♪

タンッ・タンッ・タッタータタンッ♪

タンッ・タンッ・タッタータタンッ♪

しかしさすがに私も気づく。

これ、リズムがラテン系になっただけで、練習曲以下のつまんなさやんEE:AEB64

まずいと思った私は、ソロを入れることにした。

入れ始めてから思い出したが、私はアドリブが超苦手である。リズムは消えてド下手なソロ一本になり、シュールな形相を呈していた。

曲が終わっても拍手はなかった。

気まずさを紛らわすようにパラパラと手を叩く音はしたが、なぐさめにもならなかった。

私はお店を出た。

・・・という夢である(笑)夢で良かった、本当に。

まだこんな夢を見るのだ。

戒めである。

ライブはなくても、頑張っていきます・・・・・。