そこに行ってしまえば、しばらくみんなとは会えなくなるよ。
孤独で、寂しいところだ。
誰だって行きたくはない。
行かないでやり過ごす人もいるだろう。
「ここにいてもいいんだよ。」
優しい人は、そう言うかもしれない。
でも私はしばらくの別れを選んだ。
これ以上、犠牲者を増やしてはいけない。
記憶にある限りでは、大人になってから初めてのインフルであった。
B型だからか症状は比較的軽く、さほど苦痛はなく過ごすことができた。
ただ、「家族に移さない」ということには相当気を使わなくてはならなかった。
お医者さんに「すぐ移るよ♪」と脅されたこともあり、まず私は寝室の布団の中で、いかに家族内で移さないようにするかを徹底的に調べたのだ。
感染経路は、直接つばやくしゃみから移る飛沫感染、感染者に付着したウィルスに触れて移る接触感染とがある。
飛沫感染については、顔を合わせなければまず問題はない。
問題なのは、接触感染の方だ。
例えば私が、手を口で押さえてゴホンと咳をする。鼻をかむ。
多少なりとも、手にウィルスがつく。
その手でドアを開ける。
ドアノブにウィルスが移る。
そのドアノブをダンナが触る。
触った手で目をこする。
こんなところから、ダンナの体内にウィルスが入っていくのである。
一体私の体のどこにどの程度、ウィルスがくっついているのかなど把握はできない。
ウィルスって飛ぶのか??
洋服をはたくとウィルスはフワフワ飛んでダンナのギターにくっついたりするのか??
可能性は果てしない。
患者の鼻かんだティッシュは、ふた付きのゴミ箱に入れるか、一人だけ別のものにせよとのこと。
タオルの共有もダメ。
もう何も触る訳には、触られる訳にはいかん。
このように神経質に過ごしているうちに、まるで自分が放射能汚染でもされているような気になってきてしまったのだ。
ここまで徹底したのだ。
今日まで発症しなかったダンナは、たぶん大丈夫だろう。
私もやっと、マスクをしつつ完全通常モードに戻った。
長い軟禁生活であった。
そこに行けば、しばらくみんなとは会えなくなるよ。
孤独で、寂しいところだ。
誰だって行きたくはない。
行かないでやり過ごす人もいるだろう。
「ここにいてもいいんだよ。」
優しい人は、そう言うかもしれない。
でも私はしばらくの別れを選んだ。
これ以上、犠牲者を増やしてはいけない。
私が寝込んでいる間、歌の先生もインフルB型になったことをfacebookの投稿で知った。
先生には3人の子供とダンナさんがいるが、やはり移さないようにという配慮からの「自ら隔離部屋へ行きます」の言葉に胸を打たれた(笑)
まるで映画のワンシーンのように、覚悟を決めて静かにその部屋へ入っていく先生の姿が浮かんでしまった。
涙。
7日間にわたる拘束期間であった。
ある程度自衛はできるので、皆さんもインフルにはお気をつけて。