ダンナが帰ってきたのは、もう11時近くなってからであった。
繁忙期に入りつつあるようで、この頃ずっとこんな感じである。
私のエナジーチャージも2本目に入っており、いい具合に気分が良くなっていた。
夫婦円満の秘訣は酒である。
疲れてグッタリしている妻よりも、酒飲んでゴキゲンの妻に迎えられるほうが断然いい気がするのだが。
しかし、翌朝のことは抜きでだ。
昨日の私は「夜」の方を取ったのである。
機嫌良く話しかけるので、ダンナの表情も明るくなった。
オレも飲むと言うかな?言え、と思ったが、流されなかったのでガッカリ。
もう1時間早かったら、自信もあったのだが。
なのでひとりで飲んでいた。
洗い物と片付けは放棄した。
病気ですからね、休むのが薬であるEE:AEACD
帰宅が遅かった事もあるだろうが、ダンナは1時半を回るまで起きていた。
きっと私の機嫌が良く、少しでも長く一緒にいたかったに違いないと本気で思っていたのは酔いが回っていた証拠である。
もう翌日は「療養」に充てよう。飲めるだけ飲む。
この思考も酔った証であった。
「じゃあ、お線香が消えるのだけ確認してね。」そう言ってダンナは寝室に消えて行ったが、私も眠くなってきたので線香が消えたら寝る事にした。
我が家では1本の線香を短く折って使っているので、消えるまではそう時間もかからないのだ。
なのでグラスが空くのとどっちが早いかな、などと考えていたら、私が寝るのが一番早かった。
「どっちが早いかな」が最後の思い出であり、気がついたらパソコンのイスに座ったまま膝にエルを乗せて寝ていたのだ。
意外と飲めないものだ。
じゃあ明日本気出すとして、そうとなったら今夜は早く寝よう。
今さらこの起死回生に意味があるのかは疑問だったが、これも酔った証なのかもしれない。
今度は一刻も早く寝なくては、という気持ちになっていた。
ふっと時計を見ると、2時ジャストであった。
丑三つ時ジャスト。
こえ~、歯磨きは中止だ。鏡なんか見れん。
風呂場の窓を閉めるのが最後の戸締りだが、洗面台の鏡から顔をそらしてその先の風呂場に入る。
その時何かがスッと私の足元をすり抜けた。
エルに違いない。
エルと大五郎は本当に素早くドアをすり抜けていくのだ。
特にエルは脱衣室が好きで、洗濯機の下や裏に入ってしまうのでちょっと厄介なのだった。
この時間に洗濯機の裏なんかに回られたら面倒なので焦ったが、なぁにエルは寂しがりやなのだ。電気を消してドアを閉めてしまえば、すぐに泣きが入るであろう。
追うよりもこの方が断然早いのである。
早速エルの姿は見えなくなっていたので、私は先に脱衣室を出てドアを閉め、再びパソコンのイスに座ってエルが「出して~」と音を上げるのを待った。
ちなみに「出して~」と鳴く訳ではない。
ピョンピョンとドアノブに飛びつくので分かるのだ。
しかし昨夜はしぶとかった。
眠かったのでついまたウトウトしてしまったが、ふと目を開けると、エルは足元にきちんとお座りしていて、じっとこっちを見ていたので驚いた。
ああ!?いつからそこにいるよ!?
洗濯機の裏じゃなかったのか。
姿が見えなかったのは、脱衣室にはいなかったからだったのだ。
布団が大好きなエルは、寝る支度をする気配というものが良く分かっている。
さっきまで寝ていたくせに、歯磨きを始めたり歩き回ったりし始めると、スッとおきて後をつけてくるのである。
そんな子を置いて行きはしませんよEE:AEACD
久しぶりに夜更かししたが、何となくいい夜であった。
そして久しぶりに二度寝も確定したのである。