時間がないので、軽く、昨日見た衝撃的なできごとの話でもしようと思う。
合唱の練習の帰りであった。
小平の駅で電車を待ち、その間に先生も加わって、3人で連れ立って新所沢行きの電車に乗り込んだ。
席はあらかた埋まっており、私は次の駅で降りることもあり、ドア近くの場所に立って先生の方を向いたのだ。
先生は笑っていた。
その笑いは、「笑顔」という種類の笑いではなかった。
驚きが含まれた、嘲笑的な笑い。
その時、私の視界の隅にも、何か異質なものが映ったような気がして、そちらに目を向けたのだ。
向かい側のドアを向いて、ひとりの男性が立っていた。
小柄で年配のその男性は、革のコートをまとい、洒落たシルクハット風の帽子をかぶってこちらに背を向けている。
両手をポケットに入れており、どこか時代錯誤でキザな佇まいだ。昔の推理小説にでも出てきそうな風貌。
そのポケットからは、長い紐が垂れ下がっていた。犬のリードのような、しっかりしてカラフルな紐だ。
「あれ?何か出てる。」と思い、その紐をたどっていく。
思いのほか、長い。・・・何??
その紐は、とうとう床にまで到達した。そして軽く半周ほど弧を描いた先に・・・・・・・、
タワシが繋がっていた・・・。
まだ新しい、比較的大きなワタシだ。
まるで散歩にでもつれて来たように、紐で繋がれている。
私は次の駅で降りてしまったから、その後どうなったのかは分からない。
引きずって歩くのだろうか。それともそっと抱いて行くのだろうか。
不思議な光景は時々目にすることがあるが、これは飛びぬけて衝撃的であった。何しろ、理解に苦しむ。
夜の西武新宿線での出来事であった。