さて、今日の晩ご飯はラーメンとなったので、近所のラーメン屋に向かったのだ。
初めて入るお店だ。
駐車場が一杯だったから、店の近くに車を停めて店に向かう。
すると正面から「じーさん」と「おっさん」の間ぐらいのお年頃の「じっさん」が、ヨタヨタとこっちに向かって歩いてきた。
お、千鳥1羽発見。
いや~、人が酔ってるのを見るのはおもしろいね。
すれ違っていくのだろうと思っていた。
ところが私たちがラーメン屋の方に向かうと「ん??」とそちらを見て、急に方向を変えて、私たちの前に割り込むように、店に入って行った。
一瞬の出来事である。
なんじゃ??
行き先はここだったのか??
急に食べたくなったのか??
このじっさんは店に入ると、ひとりで座っていた女性の隣に座って、彼女に向かって親しげに喋り出した。
親子だろうか。
「あの2人、一緒なの??」ダンナに聞く。
「そーだろー。待ち合わせてたんじゃないか?」そうか。
酔っ払って店をスルーするところだったじゃないか。
じっさん、しっかりせいや。
しかししばらくすると、「ごちそうさまでした~。」と女性はじっさんを置いて帰っていった。
私とダンナは顔を見合わせ、「え~~っ!?」と小声で言った。
他人だったのか。
酔っ払ってじっさん、話しかけていたのか。
そりゃちょっと迷惑。
しかし私にも経験がある。じっさん側の。
そのうちじっさんは、どんぶりをカウンターの上に置いた。食べ終わったらしい。
「ありがとうございます~。950円です。」店主が声をかける。
じっさんはゆっくりゆっくり立ち上がり、あちこちのポケットに手を突っ込むのだが、どうやら肝心なものがないらしい。
悲しそうな顔で、無言のまま店主を見つめる。
そしてまたゆっくり体中のポケットを探り始める。
時々動きが止まり、本当に情けない顔をする。
この時、店内に流れていた曲は、プリンスの「パープル・レイン」だった。
このバラードが、じっさんをより哀れに見せる。
ドラマの刑事役にでもなりそうな、ちょっとくたびれた感じのじっさんだ。
「半落ち」で法廷に立っている寺尾聡を、酔わせて困らせたところを想像して欲しい。
曲はパープル・レイン。
ハマり過ぎで笑いがこみ上げてきた。
「お財布、忘れましたか?」
店主が優しく声をかけるが、それには返事をせずに、呆然とした表情でまたポケットに手を入れる。
しかし、ゆっくりポケットから手を出すと、千円札を2枚、カウンターの上にフワッと乗せた。
あったんかい。
「あったよ、金、持ってたよっ。」ダンナが小声で言う。
今日のブログのネタが潤う、と話していたのだが、意外とつまらない展開でガッカリだ。
じっさんが店を出て行くと、店主がカウンターを拭きに厨房から出てきた。
じっさんのいた席にくると、「あっ、メガネ忘れてる!!」とメガネを持って慌てて飛び出していった。
この優等生のオチがおかしくて、危うく吹き出すところであった。
じっさん、家まで帰れただろうか。