人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

パープル・レイン

さて、今日の晩ご飯はラーメンとなったので、近所のラーメン屋に向かったのだ。

初めて入るお店だ。

駐車場が一杯だったから、店の近くに車を停めて店に向かう。

すると正面から「じーさん」と「おっさん」の間ぐらいのお年頃の「じっさん」が、ヨタヨタとこっちに向かって歩いてきた。

お、千鳥1羽発見。

いや~、人が酔ってるのを見るのはおもしろいね。

すれ違っていくのだろうと思っていた。

ところが私たちがラーメン屋の方に向かうと「ん??」とそちらを見て、急に方向を変えて、私たちの前に割り込むように、店に入って行った。

一瞬の出来事である。

なんじゃ??

行き先はここだったのか??

急に食べたくなったのか??

このじっさんは店に入ると、ひとりで座っていた女性の隣に座って、彼女に向かって親しげに喋り出した。

親子だろうか。

「あの2人、一緒なの??」ダンナに聞く。

「そーだろー。待ち合わせてたんじゃないか?」そうか。

酔っ払って店をスルーするところだったじゃないか。

じっさん、しっかりせいや。

しかししばらくすると、「ごちそうさまでした~。」と女性はじっさんを置いて帰っていった。

私とダンナは顔を見合わせ、「え~~っ!?」と小声で言った。

他人だったのか。

酔っ払ってじっさん、話しかけていたのか。

そりゃちょっと迷惑。

しかし私にも経験がある。じっさん側の。

そのうちじっさんは、どんぶりをカウンターの上に置いた。食べ終わったらしい。

「ありがとうございます~。950円です。」店主が声をかける。

じっさんはゆっくりゆっくり立ち上がり、あちこちのポケットに手を突っ込むのだが、どうやら肝心なものがないらしい。

悲しそうな顔で、無言のまま店主を見つめる。

そしてまたゆっくり体中のポケットを探り始める。

時々動きが止まり、本当に情けない顔をする。

この時、店内に流れていた曲は、プリンスの「パープル・レイン」だった。

このバラードが、じっさんをより哀れに見せる。

ドラマの刑事役にでもなりそうな、ちょっとくたびれた感じのじっさんだ。

「半落ち」で法廷に立っている寺尾聡を、酔わせて困らせたところを想像して欲しい。

曲はパープル・レイン。

ハマり過ぎで笑いがこみ上げてきた。

「お財布、忘れましたか?」

店主が優しく声をかけるが、それには返事をせずに、呆然とした表情でまたポケットに手を入れる。

しかし、ゆっくりポケットから手を出すと、千円札を2枚、カウンターの上にフワッと乗せた。

あったんかい。

「あったよ、金、持ってたよっ。」ダンナが小声で言う。

今日のブログのネタが潤う、と話していたのだが、意外とつまらない展開でガッカリだ。

じっさんが店を出て行くと、店主がカウンターを拭きに厨房から出てきた。

じっさんのいた席にくると、「あっ、メガネ忘れてる!!」とメガネを持って慌てて飛び出していった。

この優等生のオチがおかしくて、危うく吹き出すところであった。

じっさん、家まで帰れただろうか。