出先で本を読み切ってしまい、帰りに読む本がなくなってしまったので、急遽、古本屋で買ったのだ。
タイトルで選んだ(笑)
「世界」「肉食」「紀行」、私の好きなものがタイトルに3つも含まれているのだ。
写真家の著者が、世界を放浪しながら食べてきたものを、写真付きで披露している本だ。
ひとつひとつは短いので、実にたくさんの肉料理にめぐり合える。
多くは珍しいもので、その国の文化が垣間見えるのも面白い。
中にはゲテモノもあったりして、著者が冒険心に富んだ人物であることがうかがえる。
しかし逆に、それは私の期待していた路線ではなかったのだ。
「そんなもの、私も食べてみたいなぁ」という発見をして、食べに行ったり作ったりするという、自分に取り込む情報源のつもりだったのである。
おいしそうなレシピもあるにはあったが、肉が数キロ単位だったり、手に入りにくい食材を使っていたりするものが多く、現実的ではなかった。
何よりも、その場で殺して捌く描写が多く、正直キツかったEE:AE5B1
モンゴル、タイなどではご馳走として特別なときに動物を屠る習慣がまだ残っているようだが、私にはそのような習慣はないEE:AEAC2
目を背けてはいけないのかもしれないが、お肉も魚も残さず食べますので背けさせてくださいEE:AE5B1
著者が子供の頃は、当たり前のように兎や鹿、鶏を普通に殺して食べていたそうで、そういうことにはあまり抵抗がないようだ。
そして何でも食べる。
目の前で手足と首をチョン切られたトカゲでも、首を切られた蛇の心臓でも、幼虫でも。
しかし、初めて犬を食べに連れて行かれた時に、包丁を研いでいる男が彼に「どちらにします?」と聞かれたそうだ。
そこには繋がれた2匹の犬が座り、悲しげに彼を見ていた。
「金は払うから勘弁してくれ」と言ってその場を後にしたようだが、彼は自分に問う。
犬の肉を食べるのは、罪なのか?
鯨の肉を食べるのは、罪なのか?
牛の肉、豚の肉、羊の肉・・・、さまざまな鶏の肉を食べるのは罪なのか?
人間は、自らの肉体を維持するために、ほかの命を犠牲にしている。
そうすることで人類は人類として、この世に生存していられるのだ。
ほかの動物を胃に収めることによって、過酷な生物の世界を生き延びてきたのだ。
愛玩動物となったものも、かつては食材だった頃もあったのだろう。
「食材」の線引きは曖昧で難しいものなのだ。
あんなにシーシェパードなどに攻撃されながらも、私たちは鯨を食べる。
犬を食べて何が悪いのか?
・・・と考えさせられたが、無理だ、絶対に犬は食えん。
私はそういう文化の中で育ったのである。
彼らは兄弟だ。
「食材」の線引きは、文化によって違うのである。
ということで、珍しい話が多かったが、読むにはちょっと辛い本であった。
ぽ子のオススメ度 ★★☆☆☆
「世界ぐるっと肉食紀行」 西川治
新潮文庫