パソコンデスクにつこうと思ったら、大五郎がそのイスで寝ていたのだ。
黒くて大きな体を投げ出すようにして、悠然と寝ているのである。
珍しいことではない。遠慮なく私は自分を優先するが、ただどかすのではなく、一応膝に乗せてみるようにしている。
大五郎は抱っこが嫌いなのだ。
膝にでも乗せようものなら、猛然と噛み付いて蹴りを入れてくる。
彼なりに手加減はしているようだが、あの図体だ、痛い。
それでも離さずに、撫でたりこすったりしてみる。
こんなに大きな猫なのだ、抱きしめたいのである。
しかし、つれないものだ。やがて蹴り飛ばしてすり抜けていく。
「誰のおかげでメシが食えると思ってんのEE:AE4E5」
私は昭和のオヤジのような暴言を吐いてみるが、そんなもの、大五郎には屁にもならない。
どうしたって私は4度のご飯を彼に与えるし、私の遠吠えも「ごはんだよー」も、彼には違いが分からないのである。
それでも今日も私は、大五郎を抱く努力をしていた。
ブログの下書きをしてしまおうとパソコンデスクのイスを見ると、どっかりと体を伸ばしてまた寝ているのである。
なので私は座りしな、彼を膝に乗せる。
間髪いれずに喉元を撫でてやると、どうやら相当眠いようで、ひと蹴り入れるとそのまま目を閉じてしまったのだ。
おお、これはチャンスEE:AEAAB
そうよ、大五郎。こうしていると、気持ちいいでしょう。
私は首の周りを軽くこすってやる。
大五郎は目を閉じて、顎を突き出してきた。
いわゆる「あ~ん、もっとEE:AE595」である。
少しずつ手の位置を動かし、首の後ろや顎も掻いてやる。
大五郎はピーンと首を伸ばしたままだ。
「猫使い」を自認しているぽ子である、ツボは心得ている。
せいぜい首から上だ。
そして、同じポイントに執着してはいけない。
時々位置を変え、強さを変えながら、首から上をくまなく愛撫していくのが私のテクだ。
ダイめ、私の膝の上でお腹を上にして伸びている。
この子はまだ開発されていない生娘ならぬ生野郎なのだ、私は細心の注意を払いつつ、動きを繰り返す。
ところがだんだん、首の周りに抜け毛がたまってきたのである。
春だ。猫もコートを脱ぐ季節だ。
どの子も、撫でれば面白いほど毛が抜ける季節なのである。
余計な動きをすれば、大五郎は我に返ってしまうだろう。
しかし気になるのー、このフワフワの抜け毛。
手を伸ばせば専用のブラシが取れそうだが、①ブラシを取る時、②ブラシをかける時、と、2つのリスクが待っている。
考えながらも手を動かしていると、毛はどんどん抜けて宙を舞い始めてきた。
ええい、最短でブラシを取って、首の周りだけをブラッシングしてみよう。
今、首は彼の昇天スポットとなっているはずだ。ブラシでもいけるんじゃないか。
案の定、ブラシを取ろうと屈んだ途端に蹴りが入ったが、間髪いれずに首をブラシでこすると、少しずつ力が抜けていった。
おお・・・EE:AEAAB成功だ。私は本当に本当の猫使いなのかもしれないぞ。
まだ他のポイントは危ないので、毛はあちこちに抜けてくっついていたが、その場所だけをしばらくブラシで撫でていた。
しかしこれはこれで危険だ。
同じところばかりを攻めすぎると、「しつこい!!」といって怒り出すこともあるのである。
少しずつ撫でる位置を、首の横から喉元に移動させていく。
毛を取ろうと思うな。
焦らず少しずつ。
やがてブラシが喉元をこすり始めると、大五郎は首をピーンと伸ばしてのけぞっだ。
か~~っ、アタリだ、たまらん、もう撃沈じゃないか。
私は彼の沈没を確認すると、ブラシを少しずつあちこち移動させてみた。
大五郎は伸びたままである。私は思うまま、散らばった毛をブラシに吸収させていった。
ウン、ずいぶん綺麗になったね。
よしよし、じゃあここね、額んとこ。好きでしょ。
ドタマを軽くこすってやると彼は、上半身を起こしてよじ登るようにして抱きついてきた。
えーっ!?うそっ、ハグ!?EE:AE595
すっかり目を閉じて手を伸ばし、ピタリとくっついている。
優しいくせにクールで、甘えん坊のくせに近づかせないヤツ。
大きくて精悍な体は私たちの抱擁を誘うが、決してそれを許さない。
そんな大五郎が今、私に抱きついているのである。
ヨダレ~EE:AE478
・・・・・ときめいてしまった、猫に。
44歳ぽ子、女に返ったひとときである。