前回の「殺人者はそこにいる」のシリーズである。
一気に読んでまえ!!
前回同様、実際にあった事件9つを追う。
墓地で仲間の手により嬲り殺される16歳の少女。
この歳にして仲間たちとの生活は、偽装結婚、カード詐欺、車の盗難、キャバクラ稼業、借金などにまみれており、そのリーダー格の22歳の青年は切羽詰った状態に追い込まれていた。
そんな中、トラブルと鬱憤からこの少女を仲間とともに惨殺し、最後には火をつけるのだが、些細な理由で簡単に人を殺せてしまう神経に驚くばかりである。
ここでは主犯の青年の生い立ちにのみスポットを当てているが、どの少年少女達にも、恐らく不幸な生い立ちがあると思われる。
環境によって捻じ曲げられた人間性は、ここまで人を悪魔にする。
少年犯罪の切ないところは、その少年自身にだけ罪があると言い切れない部分である。
他に、たまたま出会ったヤクザに絡まれて命からがら警察を呼ぶも、適当に引き上げられてしまったために一人の命を失ってしまう事になる「立ち去り警官」の事件。
出会い系サイトで知り合った真面目な青年を、架空の人物を作り上げて騙し、しまいにはその人物と二役をこなしながら殺人を指示していく女。
監禁されていた訳でもなくいつでも逃げられるチャンスがあったにも関わらず、6人もの家族が殺されていく事件は、犯人はひとりも手を下していないという不可解な事件であった。
最後には有名な「名古屋アベック殺人事件」のその後を追うが、当時(一人を除き)少年少女だった6人のうち、誰一人として謝罪に現れることも慰謝料を払うこともない現実に、激しい憤りを感じた。
出所した一人にインタビューを試みるが、
「(刑に服して)自分の何が変わったんでしょうかねえ・・・。自分では良くわからない。事件の反省でしたら、まァ、悔い改めるのはありますけど・・・。でも、(事件に)引きずられてばっかりでもアレでしょう。前に進めないと思う。」
こんな調子である。
今は結婚して子供もいるようだが、この時点ではやはり慰謝料は一銭も支払われてはいない。
行き当たりばったりの強盗(というかリンチである)で家族を失った遺族の気持ちを思うと、やりきれない。
なぜ日本の刑務所は受刑者を更生させることができないのだろうか。
簡単にいかないことは分かるが、まるで進歩がないのでは先行きも、暗い。
ぽ子のオススメ度 ★★★★☆
「殺戮者は二度わらう」新潮45編集部・編
新潮文庫 ¥476(税別)