ま、また犯罪ものノンフィクションを選んでしまった・・・EE:AEB64
しかし「事実は小説より奇なり」。ノンフィクションというだけで、ハズれない安定があるのだ。
サブタイトルは、「ある死刑囚の告発」。
ほぼ死刑が確定していた殺人犯・後藤良次による、余罪の告発。
死刑の確定を遅らせるための時間稼ぎではない。
シャバでのうのうと暮らしている共犯への、復讐である。
そもそもは「先生」と慕い、事件への関与や余罪については沈黙を通して守って来たのだ。
しかし「先生」は、裏切った。
どうせ自分は死刑が確定する。それならすべてを洗いざらい話して、「先生」も道連れにしてやる。
しかし3件もあった余罪はどれも証拠に乏しく、立証は不可能ではと思われた。
事件の真相は、まず警察にではなく、著者である雑誌記者に伝えられた。
著者はこの話の裏付けを取り、スクープを狙う。
それにより警察が動けば、後藤にも記者にもWin-Winということになるのだ。
過去に読んだ本にも、このように雑誌記者が警察に変わって事件を追うものがあったが、雑誌記者だからこそできること、というものがある。
もちろん捜査に関しては、専門である警察の方が有利であろうが、警察は「動くまで」が重い。
ある程度の証拠集めを雑誌記者がする、それをスクープして警察よりも先に世間を動かしてしまう、というケースは意外と珍しいことではないようだ。
この話も、記者が刑事ばりに聞き込みをして回り、裏付けを取っていく。
そしてついに、「先生」と対峙する時が来る・・・。
ノンフィクションならではの迫力、驚きはさすがだが、登場する事件・人物が多く、ちょっとこんがらかったねEE:AEB64不動産の話もややこしいEE:AE5B1
そういった若干の読みにくさはあれど、元ヤクザの後藤と、不動産ブローカーの「先生」。
まるで違う世界にいたふたりが出会ってしまう「凶悪」が起こした、数々の事件。
後藤の告発の動機が残念ではあるが、こうして表に出たことに価値があると思う。
ぽ子のオススメ度 ★★★☆☆
「凶悪」 新潮45編集部編
新潮文庫