ナハハ、在庫が少年犯罪ものばかりで(笑)
これは、90年代前後に多発した10代の殺人事件にスポットをあて、被害者側の気持ちと加害者の言葉の両面から事件を振り返っている記録である。
1つ目にはあの有名な、足立区綾瀬で1989年に起こった「女子高生コンクリート詰め殺人事件」を大きく取り上げている。
事件の概要、加害者のインタビューやその後の他、興味深いのは綾瀬を歩き回り、町そのものを分析しているところだ。
町には不良がたまり、当時「その家」に女子高生が監禁されていたことを知っている仲間も多くいた。
しかしながらみんな無関心で、それが大人の耳にまで届くことはなかった。
自分を認めさせるには「強く」なくてはいけない世界。
その強さは、弱いものを救い出すようなヒロイズムではなく、「誰もできないようなことをやる破天荒さ」であり、それはどんどんとエスカレートしていくのである。
この事件と対比するように、あまり知られていない3つの事件を続けて描く。
そこに共通するのは、「理由なき暴力」である。
ちょっとムカついた、という理由で、あるいは自分の存在を誇示するために、彼らは何の恨みもない人間を簡単に殺してしまう。
著者は「なぜ」という思いで事件を掘り下げていくが、結論は出ず、こういった犯罪の変化に社会が対応していく努力をしないと、と警告を発している。
また、当時は少年犯罪の被害者側はカヤの外に出され、事件の真相について、また加害者の処遇についてなど何も知る権利がなかった。
そういった被害者側の無念も綴られ、大きな課題をいくつか投げかけた形で本は終わっている。
その後進展したものもあるが、死んだものは帰ってこない。
刑や罰よりも、償いに重点を置くような社会にならないと、遺族が報われる日は来ないだろう。
これも大きな課題のひとつである。
ぽ子のオススメ度 ★★★☆☆
「17歳の殺人者」藤井誠二
朝日文庫