時間なんか、ない方がかえって有効に使うものなのかもしれない。
その有難みを忘れていたぽ子である。
昨日今日と午前からの出勤だったので、3時に上がる事ができた。
出勤前に洗濯もしたし、簡単な片付けも済ませてある。
ないと欲しがる駄々っ子のように、なけりゃかえってやるのである。
オラ、時間、足んねーぞ、よこせよこせ!!
もちろん帰宅後の時間も無駄にはしない。
今年こそ、人を呼べる部屋にするのだ。
と言う事で、昨日は洗面器を洗った。的外れ。
今日は何かデカい事をしてやろうと、リビングの照明のカバーを拭く事にした。
それは天井に貼りつくUFOのような、平たい円形の大きなカバーである。
ここに越して来てから5年ほど経つが、まだ一度も外した事がない。
そこには黒いカスが溜まっているのが透けて見えたが、後回しなのである。
風呂、メシ、洗濯、猫、まだまだその前に急を要するものがあるのだ。
そして、それら「急を要するもの」ものんびりやっているので、電気のカサなど拭く暇はなかったのである。
別に今も優先順位が変わったわけでもなく、急を要するものはたくさんあったが、何となく電気のカサも急を要する状態になりつつある事に気がついた。
5年に一度だ。
今やってしまえば次は5年後である。あと5年、やらなくていいのである。
磨かれたカバーによって急に明るくなった照明で、ダンナを驚かせてやろう。
難関はカバーの取り外しだが、ちょうどいい事に、照明の真下にソファがあった。
そこに乗って背伸びをしたら手が届いたので、グルッと回してみる。
グル。
グルグル。
グルグルグルグル。
これでも少しは前進しているのか?グルグル。
「押し上げて左方向に回す」と書いてあった。
柔らかいソファの上で背伸びをして、照明を押し上げる。ツ、ツライ。
更に回す。
ムムーッと声が漏れる。
20回ぐらい回してやっと外れたが、気が緩み始めたところに突然ドッと落ちたのでビビッた。
悪意のある取り外し法である。
さて、カバーは埃だらけ虫だらけカスだらけであった。
風呂場のシャワーで流したら一網打尽にできたが、まだまだッ、今年の私は違うぞ。
軽く水分を拭き取ったら「マイペット」でピカピカだ。
取り外しさえできれば、簡単な作業であった。
こんな事でダンナをあっと言わすことができるのだ。もっと早くやれば良かった。
取り付けは、取り外しの逆だ。
ソファの上に乗って回して押し上げりゃいいだろう。
また背伸びか。フムーEE:AE4E5
フムーEE:AE4E5
フムーEE:AE4E5
フムーEE:AE4E5
つかないEE:AEB64
グルグル不安定に回るだけである。
しかも回すたびにカバーに、何かのカスが溜まっていく。
フ、ムーEE:AE473
くそー、足元がソファのクッションでフラフラフラフラして、力が分散されてしまう。
脚立だッ。
負けないぞ、てめー、ぜってーはめてやるッEE:AE4E5
2階から脚立を下ろし、照明の下で立てる。
実は私は脚立が怖い。
片側にだけ足をかけたら、傾いて倒れそうな気がするのだ。
なのでそっと2段目まで上ったら、すばやくそいつにまたがった。
これでやっと安心である。
さて、少しばかり天井に近くなり、足場も良くなったが、依然カバーははまらない。
大きな円のカバーであり、円周に均等に力を加えることができないのである。
こっちが持ち上がればあっちが下がる。
照明に引っ掛ける部分は3ヶ所あるが、どうしても1ヶ所しかはまらないのである。
その1ヶ所も、たった一度はまっただけである。
私は決して負けず嫌いな性格ではない。
ただしそれは、相手が人間の場合だけである。
照明め、お前には負けたくない。
このように私は、物相手には戦うのだ。
どうしても動かないものをムキになって動かすとか、こんがらかったネックレスをほどくとか、出てこなさそうなものを探すとか、そういうことには非常にしぶとい。
しかし負けた。超くやしい。
なぜ物が相手なら戦うのかというと、比較的勝ちやすいからである。
もともとついていた照明だし、誰でも取り付けられるようになっているはずだ。
これは勝ち戦だったのに、私が負けたのである。悔しい。
今ヤツは、丸裸でピカピカ光っている。
恐らくカバーをつければもっと暗くなるはずだ。
こんなんではもう、「明るくなった」と驚いてはもらえない。
負けとは、そういう事なのだ。