人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

背水の陣

ここ数日、ダンナは毎晩真剣に考えていた。

残業で帰りは遅いが、酒を飲みながら、憔悴しきっている私を案じて。

とうとう昨日はこう言い出した。

「ぽ子でもできる仕事は何だろう?」

このところ仕事での失敗が続いていて、私は本気で悩んでいた。

ボケはじめたんだろうか、真面目にそう言うとダンナは「違う。ぽ子はそういう人間なんだ、もともと。」とあまり嬉しくないことを言った。

そして、「製造は向かない。責任ある仕事も無理だ。」と真剣に言ったのだ。

じゃあ何ならできるだろうか。

「封筒に紙を入れたりシール貼ったりするだけなら・・・。」

「ダメダメ、入れ忘れたり貼り忘れたりするし、数、間違えたりするでしょ。」

ええっ!?私はもうそんなところまできてるのか。

「自宅でパソコンに入力したりする簡単な仕事は?」

「このご時勢、そんな仕事はもう見つけられないよ。」

「接客、得意だけど・・・。」

「おお、そうだ、ラーメン屋とかいいか!?」

ラーメン屋なら経験がある。まかないは毎日ラーメンだった。悪くないな。

「あ、でも・・・。」

しかしダンナの顔が曇る。

「注文間違えたりしそうだな。会計なんかもヤバい。」

却下。

「発売前のゲームをプレイする仕事があったような・・・。デバッカー??」

「遊びじゃないんだから、感想言えばいいだけじゃないでしょー。後で不具合とかが出て、誰これチェックしたの!?ってなりそう・・・。」

しかしこれはまだ諦めてない(笑)

「・・・死体洗いならいかがでしょう。」ヤケクソだ。

「そ、それはやめようよ!何か連れて帰ってきたりしそうだよー。」

開けてはいけない扉が開きそうな職である。

言い方によっちゃ尊い職なのだが。

「介護の職ならいっぱいありそうだけど・・・。」

「大変だよ、介護なんて。」

「じゃあせっかく取ったホームヘルパーの資格は無駄だったのか・・・。」

「命に関わるような仕事なんかダメだよ。」

「じゃあやっぱり・・・。」

「死体洗い・・・。」

「そういえば今、会社の近くで発掘調査やってるんだけど、ああいうのならいいかもね。」

ダンナが提案を出した。

しかし言った先から「あぁ、でも大事な遺跡とか壊しちゃったりしそうだね・・・。」と取り下げた。

こうして夜も更け、私でもできそうな仕事がいくつか考え出された。

それは、

・発展途上国で井戸を掘る。

・空き缶拾い。(ダンナは真剣に言った。)

・「何かこう、無造作に破壊する仕事、『大改造・劇的ビフォーアフター』でよくやってるような・・・。」リフォームの際、古い家をバッキバキ壊すアレだ。

厄介なのは、私の能力の低さは「計算が苦手」だとか「仕事が雑」だとかいう特定なジャンルではなく、「ありえないほどオッチョコチョイ」という全ての能力を下げるところにある。

そしてそのオッチョコチョイのスキルは年々アップしている。

クビが早いか辞表が早いか・・・。

背水の陣である。

*業務連絡*

お代官、出動します><