ここ数日、ダンナは毎晩真剣に考えていた。
残業で帰りは遅いが、酒を飲みながら、憔悴しきっている私を案じて。
とうとう昨日はこう言い出した。
「ぽ子でもできる仕事は何だろう?」
このところ仕事での失敗が続いていて、私は本気で悩んでいた。
ボケはじめたんだろうか、真面目にそう言うとダンナは「違う。ぽ子はそういう人間なんだ、もともと。」とあまり嬉しくないことを言った。
そして、「製造は向かない。責任ある仕事も無理だ。」と真剣に言ったのだ。
じゃあ何ならできるだろうか。
「封筒に紙を入れたりシール貼ったりするだけなら・・・。」
「ダメダメ、入れ忘れたり貼り忘れたりするし、数、間違えたりするでしょ。」
ええっ!?私はもうそんなところまできてるのか。
「自宅でパソコンに入力したりする簡単な仕事は?」
「このご時勢、そんな仕事はもう見つけられないよ。」
「接客、得意だけど・・・。」
「おお、そうだ、ラーメン屋とかいいか!?」
ラーメン屋なら経験がある。まかないは毎日ラーメンだった。悪くないな。
「あ、でも・・・。」
しかしダンナの顔が曇る。
「注文間違えたりしそうだな。会計なんかもヤバい。」
却下。
「発売前のゲームをプレイする仕事があったような・・・。デバッカー??」
「遊びじゃないんだから、感想言えばいいだけじゃないでしょー。後で不具合とかが出て、誰これチェックしたの!?ってなりそう・・・。」
しかしこれはまだ諦めてない(笑)
「・・・死体洗いならいかがでしょう。」ヤケクソだ。
「そ、それはやめようよ!何か連れて帰ってきたりしそうだよー。」
開けてはいけない扉が開きそうな職である。
言い方によっちゃ尊い職なのだが。
「介護の職ならいっぱいありそうだけど・・・。」
「大変だよ、介護なんて。」
「じゃあせっかく取ったホームヘルパーの資格は無駄だったのか・・・。」
「命に関わるような仕事なんかダメだよ。」
「じゃあやっぱり・・・。」
「死体洗い・・・。」
「そういえば今、会社の近くで発掘調査やってるんだけど、ああいうのならいいかもね。」
ダンナが提案を出した。
しかし言った先から「あぁ、でも大事な遺跡とか壊しちゃったりしそうだね・・・。」と取り下げた。
こうして夜も更け、私でもできそうな仕事がいくつか考え出された。
それは、
・発展途上国で井戸を掘る。
・空き缶拾い。(ダンナは真剣に言った。)
・「何かこう、無造作に破壊する仕事、『大改造・劇的ビフォーアフター』でよくやってるような・・・。」リフォームの際、古い家をバッキバキ壊すアレだ。
厄介なのは、私の能力の低さは「計算が苦手」だとか「仕事が雑」だとかいう特定なジャンルではなく、「ありえないほどオッチョコチョイ」という全ての能力を下げるところにある。
そしてそのオッチョコチョイのスキルは年々アップしている。
クビが早いか辞表が早いか・・・。
背水の陣である。
*業務連絡*
お代官、出動します><