久々に派手にやってしまった。
思い出すことすら恥ずかしい。
あぁ、楽しい酒と恥は比例するものなのだ。
昨日ダンナは会社で飲み食いしてくるという事だったので、私は娘ぶー子と駅前の居酒屋で飲んでいた。
そのまま後からダンナが合流し、明日も早いぶー子は帰って行ったが、ここでダンナと飲みながらある店の存在を思い出したのだ。
最近知った店である。
そこから歩いてすぐのところにあるのだが、演奏もできる飲み屋だ。
7、80年代の音楽を中心としているライブハウスのようなその店のターゲットは、私達世代と思われる。
ずっと気になっていたのだが、酔った勢いで行ってみる事にした。
想像通りの店であった。
中にはちょっと年上と思われる常連の男衆がすでに飲んでいたが、誰もが気持ち良く迎え入れてくれ、早速セッションとなった。
しかしだ。
セッションと言っても私に持ち曲などない。
何ヶ月も前に「この曲を弾きますよ」とでも言われないと、人前で演奏など無理なのだ。
ところが恐るべし酒パワー、恥知らずのぽ子は気がついたら一緒に弾いていた。
「スリーコード、弾ける?」と聞かれたのだが、スリーコード=3つの和音である。
和音3つぐらいなら何とかなると思ったのだが、これが大きな間違いだった。
スリーコードの意味するところは、ブルースのフリーセッションであった。
しかし酔ってクソ度胸がついていたぽ子は、メチャクチャに弾きまくった。
なんじゃそりゃ?という感じである。
ボーカル担当の男性以外のカウンターに座っていた全員が参加したが、目の前のテーブルにはカップルが「客」という感じで演奏に聴き入っている。
いいのか?客よ、変なのがひとり混じったセッションだぞ。
しかしある時点からもう最後の羞恥心も飛んで行き、ぽ子はどんどん暴走した。
3連、グリッサンド、もうブルースの域を超えて現代音楽と化していた。
それだけでも足りずに歌も歌った。
フリーセッションなので決まったメロディも歌詞もない。
もう気違いである。
アラブあたりの宗教でアブラダ~~~♪とか歌ってるあれに近いか。
私はブラックな感じを意識したつもりだったが、酒はブラックミュージックをもアブラダ~~にさせるのだ。
朝、目覚めて恥ずかしくて死にそうな気持ちにもなるだろう。
しかしこれが超気持ち良かった。
本当に楽しい夜だった。
演奏がない間は大きなモニターからツェッペリンやクラプトンのライブが流れ、カウンターでは今日初めて会ったとは思えないぐらいに、皆、楽しく話をしてくれる。
しこたま飲んで、したたか酔った。
帰りは自転車がこげず、ダンナに絡んで困らせたようで、朝になるとまず「昨日は大変だったよ・・・。」と言って彼は私を睨みつけた。
ところで今日もぶー子は学校だったが、5時20分に朝食であった。
私はリビングのソファで伸びていたが、ぶー子がもの凄い勢いで現れたのは8時半である。
絶対に落とせない授業だったらしいのだが、絶対に間に合わない時間である。
アブラバ~~~・・・。
激しい二日酔いだったが、私は心に大きな決心をしていた。
これからスリーコードのアドリブの練習をたくさんして、またあの店に行こう。
トイレのカレンダーがなぜか崩壊していた。