人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

スリーコード

久々に派手にやってしまった。

思い出すことすら恥ずかしい。

あぁ、楽しい酒と恥は比例するものなのだ。

昨日ダンナは会社で飲み食いしてくるという事だったので、私は娘ぶー子と駅前の居酒屋で飲んでいた。

そのまま後からダンナが合流し、明日も早いぶー子は帰って行ったが、ここでダンナと飲みながらある店の存在を思い出したのだ。

最近知った店である。

そこから歩いてすぐのところにあるのだが、演奏もできる飲み屋だ。

7、80年代の音楽を中心としているライブハウスのようなその店のターゲットは、私達世代と思われる。

ずっと気になっていたのだが、酔った勢いで行ってみる事にした。

想像通りの店であった。

中にはちょっと年上と思われる常連の男衆がすでに飲んでいたが、誰もが気持ち良く迎え入れてくれ、早速セッションとなった。

しかしだ。

セッションと言っても私に持ち曲などない。

何ヶ月も前に「この曲を弾きますよ」とでも言われないと、人前で演奏など無理なのだ。

ところが恐るべし酒パワー、恥知らずのぽ子は気がついたら一緒に弾いていた。

「スリーコード、弾ける?」と聞かれたのだが、スリーコード=3つの和音である。

和音3つぐらいなら何とかなると思ったのだが、これが大きな間違いだった。

スリーコードの意味するところは、ブルースのフリーセッションであった。

しかし酔ってクソ度胸がついていたぽ子は、メチャクチャに弾きまくった。

なんじゃそりゃ?という感じである。

ボーカル担当の男性以外のカウンターに座っていた全員が参加したが、目の前のテーブルにはカップルが「客」という感じで演奏に聴き入っている。

いいのか?客よ、変なのがひとり混じったセッションだぞ。

しかしある時点からもう最後の羞恥心も飛んで行き、ぽ子はどんどん暴走した。

3連、グリッサンド、もうブルースの域を超えて現代音楽と化していた。

それだけでも足りずに歌も歌った。

フリーセッションなので決まったメロディも歌詞もない。

もう気違いである。

アラブあたりの宗教でアブラダ~~~♪とか歌ってるあれに近いか。

私はブラックな感じを意識したつもりだったが、酒はブラックミュージックをもアブラダ~~にさせるのだ。

朝、目覚めて恥ずかしくて死にそうな気持ちにもなるだろう。

しかしこれが超気持ち良かった。

本当に楽しい夜だった。

演奏がない間は大きなモニターからツェッペリンやクラプトンのライブが流れ、カウンターでは今日初めて会ったとは思えないぐらいに、皆、楽しく話をしてくれる。

しこたま飲んで、したたか酔った。

帰りは自転車がこげず、ダンナに絡んで困らせたようで、朝になるとまず「昨日は大変だったよ・・・。」と言って彼は私を睨みつけた。

ところで今日もぶー子は学校だったが、5時20分に朝食であった。

私はリビングのソファで伸びていたが、ぶー子がもの凄い勢いで現れたのは8時半である。

絶対に落とせない授業だったらしいのだが、絶対に間に合わない時間である。

アブラバ~~~・・・。

激しい二日酔いだったが、私は心に大きな決心をしていた。

これからスリーコードのアドリブの練習をたくさんして、またあの店に行こう。

トイレのカレンダーがなぜか崩壊していた。