人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

18歳の記憶

それは構想から着手まで数ヶ月の、壮大な計画であったのだが。

我が家には3匹の猫がいるが、猫というものはご飯を食べる動物である。

どれぐらい食べるかというとその猫によってまちまちだろうが、我が家の猫はチビに合わせて、少量を4回にしている。

という事は、1日に4回の「猫のエサやり」という作業をしなくてはならないのだ。

頭が痛かろうが、時間がなかろうが。

あまり頭のいい奴らじゃないので1回2回抜けても平気だが、まぁ基本作業は1日4回だ。

なので、できるだけ負担は少ない方がいい。

我が家の猫は3匹ともストラバイト系なので、ご飯は決められている。

ヒルズのc/dという銘柄のドライフードで、2キロの袋入りだ。

徐々に減っていくとは言え、1日4回この2キロの袋を持ってほんの少量を3つの皿に入れるのは結構ホネである。

口は親切にジップロックだが、これは少量を出すには著しく向かない。

なので考えた。

ある日、米を入れる容器をホームセンターで見つけたのだ。

大きさも形も冷蔵庫に入れる麦茶の容器のようなもので、出口をスライドさせれば中味が出るようになっている。

これにドライフードを移し、そこからやるようになったのだ。

容器に移す手間は増えたが、1回1回の負担はグッと軽くなった。

ちなみにこれは壮大な計画ではない。

で、実は我が家の猫が揃ってc/dを食べるようになるまでは、2種類のドライフードがあったのだ。

全員一度にストラバイトと診断された訳ではないので、時間差があった。

その間2種類だった訳だが、当然容器も2つあったのだ。

しかし今や猫オールストラバイト、容器がひとつ余っていたのだった。

私はグータラでだらしがないので片付ける事などせず、それはいつまでも以前からの定位置にあった。

「無駄だ」と気付くのに数ヶ月、

「邪魔だ」と気付くのに数ヶ月。

やっと自覚はしても面倒でまたそのまま数ヶ月。

「このままじゃいけない」で数ヶ月。

しかしだ。

どうするか考えるのには数分だ。すぐに思いついた。

だったら早く何とかしろよって感じだが、私はこの空いた容器に猫のトイレの砂を入れる事にしたのだ。

使えるものを捨てるのはいけない。

それが我が家の散らかる原因にもなっているが、こうして陽の目を見ることもあるのだ。

救世主・ぽ子である。

で、思いついてから具体的な行動を起こすまで数ヶ月。

具体的な行動とは「洗う」という事だが、やっと洗って干して、・・・そのままになっていた。

まだ1ヶ月は経っていないだろう。

まだ1ヶ月も経ってないのだからそのまま放置していてもいい期間なのだが、なぜ今こうしてこんな事を書いているのかと言えば、1ヶ月も経たずに変化が起きてしまったというイレギュラーな事態だからである。

私は仕事から帰り、猫の3回目の食事の準備をしようとしていた。

彼らの腹時計はなかなか正確で、6時前後になるとくれーくれーと催促を始めるのだ。

あまりうるさく鳴かれるとウンザリしてわざとチンタラ準備したりもするが、今日は比較的大人しかったので通常ペースで私も動いていた。

流しの下の収納棚を開ける。

ご飯の容器を出す。

その時には気付かなかったが、何かいつもと違ったのだろう、私は容器を落としてしまい、フタが取れて中味が放出されてしまった。

急いで拾い集めたが、良く見るとそれはいつもの容器ではない。

これは数ヶ月がかりでやっとこの段階までたどり着いた「猫エサ容器改め猫砂容器」であった。

何が何だか訳が分からなかったが、色々考えて娘ぶー子が入れたのだろうと結論を出した。

もう一度収納棚を開けて見ると、いつも使っていた容器がちゃんとご飯が入った状態で置いてあった。

つまりご飯の容器はふたつになってしまったのだ。

なぜぶー子はいつも通りにご飯をあげなかったのだろうか。

ほったらかしの空の容器を見て中のご飯がなくなってしまったと判断したのかもしれないが、容器は色も形も違うし、この状態で数日置いてあったのだ。

しかし18歳の記憶とはこんなものである。

どうでもいいとみなした事柄は、かなり大きく見積もって削除する。

そして彼女にとっては世の中どうでもいい事だらけなのである。

彼女が記憶力を発揮するのは「三国無双」と「イケメン」ぐらいである。

この頃「金」ですらどうでも良くなってきたようで、バイトなどの努力はやめてうまく親にタカるようになってきた。

今日は新宿で作ったメガネを取りに行ったが、ダンナと待ち合わせて一緒に帰って来ると言っていた。

メガネ以外のものを持って帰って来る方に賭けてもいい。