問題
昨日の事だ。
仕事を終えて家に帰り、まずは買ってきた食材を冷蔵庫に入れ、猫にご飯をあげてから洗濯物を取り込んだ。
もどって一息つくと、ワラワラと猫達が寄ってくる。
ほぁ~~、何か疲れたね。
酒が抜けたのはいいけど、二度寝もしてないもんね。ん?
あれれ??
ラ??
右の瞼が腫れてる??
ラを抱き寄せて、良く見てみる。
腫れてるッ。
しかも何かキズ??
ケンカしたのか??
うちの実家の猫は、外で引っ掻かれて帰ってきて、その傷が元で死んでしまった。
良くあることらしい。
瞼の上。
これはまずい。
私は急いで支度をし、ラをエル用のキャリーに押し込んで病院へ向かった。
病院は7時までである。
すっ飛ばさないと間に合わない。
車の中では鳴きっぱなしであった。
ダイとエルは大人しいところをみると、子猫のうちから慣らしておく方がいいのだろう。
もう遅い。
私はハンドルを握りながら名前を呼び続けたが、余計に不安にさせたような気がしないでもない。
滑り込みで病院に入った。
もう掃除機などかけて閉める準備をしていたが、気持ち良く診てもらうことができた。
初めての先生である。若い男性。
「えっと・・・、瞼の上を怪我した・・・と?」
問われると私は、どうやら引っかかれたらしい、と言ってラをキャリーから出した。
先生は怖がらせないようにゆっくり時間をかけて顔やら頭やらを覗き込み、「引っかかれた・・・。」と私の言葉をなぞった。
「・・・引っかかれ・・・てないですか・・・?」
早とちりだったか?そんな風に見えたのだが。
先生はこっちに向き直ると、「ちょっと分かりにくいですが、反対の目の上、それと両方の耳、みんなちょっと毛が薄いですね。引っかかれたというより、自分で搔いた、という感じがします。」と言った。
言われてみると確かに、それぞれ毛が薄い気がする。
右瞼だけがちょっと腫れているが。
「ホントですね。これはどうしたんでしょうか?」
「まぁ色々原因は考えられますが、例えば皮膚病。ただそれならもっと搔き壊すように酷く搔くことが多いですね。他にはストレスとか・・・。」
「ストレス!」
心当たり、大ありである。
ダイが来てみんなをしつこく追いかけ回し、噛み付いたり蹴ったりやりたい放題しているのである。
私は言われた事に答えているだけのつもりだったが、先生が話を聞くのがうまいので、つい色んなことを喋りすぎた。
それによって、色んなことが分かったのだ・・・・・・。
「はい、この間子猫が1匹増えたもので、追い掛け回されてかなりストレスになってると思います。そのせいで別のちっこいのをいじめるんですよ。その子にやられたのかと思いました。なので良く叱ってます。ご飯なんかもチビの残したのを食べちゃうので、怒ってばっかりなんです。好きなだけ食べさせてもいいんでしょうか、こんなに太ってしまいましたが。ご飯ですか?カリカリに缶詰を混ぜてあげてますが、その・・・、ホントはいけないんですが、療養食に勝手に缶詰をミックスして・・・。ハイ、4匹中3匹が結晶のできやすいストラバイト体質なんです。でも、中の1匹が便秘ぎみなので、水分の多い缶詰を混ぜてみたところから、つい・・・。ストラバイトの検査は、2年ほど前に診断してもらったっきりです。おしっこが上手く採取できないんです。・・・ラが体を搔いたりしているところはあまり見たことがないような感じがしますが、そう言えばお腹の毛もいつからか薄いです。あの、どうしたらいいでしょうか??」
・・・・・・・・。
問題だらけじゃん!!ウチの猫!!
と言うか、
問題だらけの飼い主じゃねーかEE:AEB64
エルのハゲにまで話が発展したら、彼女が漏斗胸で肺炎を起こして入院をした話にまで遡る事になるだろう。
私は先生の反撃を待った。
しかし先生は怒りもせず、ラが緊張したために大量に抜けた毛をクルクル丸めながら、
EE:AE4DB猫は怒られても、覚えることができません。
EE:AE4DBカロリーの低い療養食のサンプルをあげましょう。
EE:AE4DBストラバイトの検査をしましょう。
EE:AE4DB瞼には薬を出しておきます。
・・・というような事を混ぜながら、丁寧に同情しつつ答えてくれた。
また検査をして体質が改善されていたら、もう療養食からは解放されるのだ。
私は自分の怠慢を恥じた。
よし、一からやり直すぞ。ストラバイトも猫たちとの関係も。
私は先生に滑り込みで来てしまったことを詫び、頭を下げてラをキャリーに入れようと抱き上げた。
先生はキャリーのファスナーを開けてくれたのだが、「・・・これ、ちょっとこの子には小さい・・・ですね・・・。」とたじろいだ。
ラとミが使う大きなキャリーも、買わなくてはならない。