人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

家族

以前テレビでやっていた話。

人懐っこくて従順だった飼い猫が、急に凶暴になって手がつけられない状態になってしまった。

辛うじてその家のお母さんだけが近寄れるが、大学生になったお嬢さんには威嚇して寄せつけなくなってしまった。

それまでみんな仲良くやっていたのだ。

捨て猫だったところを拾って、子猫の時から育てたそうだ。

もちろんお嬢さんも可愛がっていて、猫の方も良く懐いていた。

テレビがその家に入ると、ケージの中のその猫は「フーッ!!」とこっちに向けて威嚇した。

「人が来るときにはここに入れておかないとダメなんです。」飼い主のお母さんが言う。

で、番組では動物の気持ちが分かるという人を連れてきたのだ。

半信半疑で見ていたが、驚いた。

彼女は「以前は違う家に住んでたんじゃない?」といきなりその家の過去を言い当てた。

それまではお母さんの実家でお嬢さん、お母さん(お父さんいたっけ??)、おじいちゃんおばあちゃんと暮らしていたのだが、新しく家を買って実家を出たのだ。

で、みんなが離れ離れになってしまって悲しい、と猫が言っているというのだ。

その段階ではまだ、ホントかよ、と思って見ていた。

じゃあ大学生のお嬢さんはなんで嫌われるよ?

このお嬢さんは大学生になってから家を空けることが多くなり、猫は見捨てられたのだと思っているらしい。

ふ~ん・・・。

まだ私は信じていなかった。

まあ何とでも言えるじゃん。

証拠がない。

「じゃあ猫の目を見ながらちゃんと話してあげて。『ゴメンネ』って言ってあげて。そしてゆっくりまばたきをするの。」

彼女は言った。

威嚇する猫にお嬢さんはゆっくり近づいて、彼女の言う通りにした。

すると驚いた事に、牙を剥いて怒っていた猫が次第に大人しくなり、そのうちコロンとひっくり返ってお腹を出したのだ。

これには驚いた。

お嬢さんは感激して泣いている。

そしてさらに近づき、ゆっくり猫に触れた。

確か最後に触ってから3年が経っていたとか。

人間が思っているよりも、はるかにたくさんの思いを動物は持っているのだ、ぽ子はそう思ったのだった。

エルはまた舐めハゲを作り出した。

執拗に舐めるので、3つも出来てしまった。一つはジクジクしている。

前と同じだ。

なぜか布団に入りたがり、時々とても興奮する。

滅多に鳴かないエルが布団のある部屋の前で立ち上がり、ニャーニャーと激しく鳴いている。

布団。

これが何かエルの内面に影響を与えているのは確かである。

それとも布団に一緒に入るという行為の方か。

そして、また手にも反応するようになった。前と同じである。

鳴いて手に食いつき、布団まで引っ張って行こうとするのである。

昨日はダンナが先に寝たのでダンナにくっついて行って一緒に寝ていたはずだが、私もそろそろ寝るか、と立ち上がって振り向いたらエルがいた。

目が合うとギーギーと激しく鳴き、手に噛みついて来る。

そしてダンナの寝ている和室へ先導する。

「こっち、こっち!!」と言うように何度も振り返っては鳴く。

布団に入りたいんだろう。

何で出てきちゃったんだろう?

私はエルについて行き、寝ているダンナの布団を軽くめくった。

エルはズズズと興奮してその中に入っていったので、私は和室を出た。

しかし振り向くともうエルがいて、「ギー」と鳴く。

何なんだよ一体?

私達はもう一度同じ事を繰り返した。

エルがあまり鳴くのでダンナが目を覚まし、布団を軽く持ち上げてエルをいざなった。

今度も大人しく布団に入ったが、やはり部屋を出たらついて来て鳴きだした。

うーん・・・、どういう事だ??

布団に入るところまでは良さそうなんだけど。

私はもう一度エルについて、ダンナの布団まで行った。

もしかして、と思い、今度はダンナの横に寝てみた。

エルは一度布団に顔を突っ込んだが、寝ている私を見たら布団の中に姿を消した。

やがてそこからゴロゴロと喉を鳴らす音が聞こえてきた。

しばらくそこにじっとしていたが、私は自分の寝るべき場所に行かなくてはならない。

ゆっくりゆっくりと音を立てないように注意を払い、私はダンナの和室を出た。

今度はエルも来なかった。

エルはみんなで一緒に寝たかったのだろうか?

この時、私は先程の猫の事を思い出した。

私達が思っているよりもこの子達は、もっとたくさんの事を思っているのかもしれない。