人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

カラムーチョ

この頃、娘ぶー子は私より早く起きている。

夜遅くまでダンスの練習をしているので、疲れて風呂に入らず寝てしまうからだ。

そして朝風呂に入る。

「夜遅く」という部分を除けば、何て高校生らしい生活なのでしょう。

風呂の威力を改めて知ったのであった。

しかし激しい練習のせいで、足を痛めてしまった。

車で学校まで送って行く。

往復たかだか15分だが、ゲーム時間に換算したら結構な時間だ。

先週からなかなかゲームの時間を作れない状態になっているが、こういうものは、少ない時間でもコンスタントに続けなければ、離れていってしまうのだ。

ダンナのドラクエも、ハンドルを買ったカーレースのゲームも、とうとうしまい込んでしまったし、コツコツとミャイルを貯めていた「まいにちいっしょ」も、長いこと見ていない。

ハッ、まじめに、ゲームを続ける秘訣を語ってしまった。

しかし今日久々に手をつけたら、停滞していたストーリーが先に進んだ。

これだからやめられないのだ。

ゲームもやったしピアノも弾いた。

頑張れ、ぽ子。寝るんじゃないぞ。

テーブルの上を見たら、学校からの通信が数枚出ていた。

「学校徴収金の納入について」。

お~っ、そうそう、金額がわからなくて困ってたよ。

郵便局から引き落とされるから、忘れないように1年分入れておこうって言ってたんだった。

去年は8万ぐらいだったから、一応多めに10万。

ダンナが昨日銀行から下ろして、封筒に入れて持ってかえってきた。

しかし、通信の金額を見たら、今年は8千円程だった。はぁ??

そうだった、去年は修学旅行の分もあったから高かったのだ。

こりゃ、ずいぶん余るぞ。

黙っていれば9万、私のものになる。

たやすいなぁ~~、金儲け。

ダンナ、私を敵に回すと怖くてよ。フフッ。

ダンナを敵に回したくないから返すのだが。

テーブルの上にはカードの明細や領収書の類、ダイレクトメールや通販のカタログも出ていた。

これを片付けるのは意外と時間がかる。

明細や領収書の封筒には広告も入ってるし、時々オイシイ情報もあるからつい目を通してしまう。

それを必要なものとリサイクル紙類と燃えるゴミに分ける。

ダイレクトメールにカタログも然り。

新聞の折り込みもだ。

つまり「読む時間」だ。

読む。

こうして読んでいると・・・、

眠くなる。

ぽ子~、頑張れ~~~!!

ここで寝たらまた夜、眠れなくなるよーー!!

でもぽ子、座ってます。

お尻の「おねむスイッチ」、入ってます。

「寝ちゃダメ、寝ちゃダメ!!」と羽の生えた小さなぽ子が、右の耳で囁く。

「寝ちまえよ、寝ちまえよ!!」と尻尾の生えたぽ子が、左の耳で囁く。

「冷蔵庫にがんもどきの煮物があるよ!!」天使が必死に続ける。

えっ、あっ、そうだ、昨日の残りだ。

やっと私は立ち上がる。

「こら、ぽ子!!そんなものまずいに決まってるだろ!!」悪魔が焦る。

うるせー、作ったのは私だ。失礼なこと言いやがって。

こうして何とか生還を果たしたのだった。

午後の仕事から帰って来ると、ひどい事になっていた。

キッチンのコンロの上の鍋と、オイルポットが倒れて中味がこぼれていた。

エルはしっぽをピンと立てて「おかえり~~!」とすり寄ってきて、ラとミはダイニングのイスの上でかたまって丸くなっていた。

だ、誰だあ!!

みんな、しらばっくれやがって!!

こんな事もあろうかと、スープの鍋と肉の鍋は風呂場に避難させてあったが、お湯の鍋に油だぞ、どこが魅力なんだ。

昨日は昨日でナスを食われ、テーブルの上の醤油さしが倒されて、携帯の料金の領収書と明細と料理本が醤油漬けになった。

脱衣室に干したが、プンプン匂ってたまらなかったんだぞ。

しかし、猫は現行犯でないと、叱っても効果がないのだ。

「こんなところに置いておいた私が悪いのだ。」

私は敬虔なキリスト教の信者のように、繰り返した。

息を深く吸って気持ちを切り替える。

ピアノ、弾こ。

少しの時間でもコンスタントにね。

そして、ピアノを気が済むまで弾いてリビングに戻ると、カラムーチョが食われて床に袋だけ落ちていた。

「あう~~ん??」ラよ、お前か。

現行犯なら叱らずとも白状する、小心者だ。

ビビッて姿勢を低くし、こちらを見ている。

くぉのーーー!!

私はラを脇から抱き上げこちらを向かせ、「パプッ!!」「パプッ!!」と子音だけを思い切りかましてやった。

馬鹿馬鹿しい折檻だが、この程度にしておかないとエスカレートするとヤバい。

ラはPという子音を当てられる度に、目をキュッキュッと瞑る。

あぁもう、何でカラムーチョ・・・。

引き出しが開いている。

これからはカラムーチョですら避難させなくてはならないのか。

とんでもないヤツと同居しているぽ子一家である。

ひえっ、もう11時だ。

寝つきが悪い前提で、早く寝たかったのだ。

もう寝ます。

おやすみなさい。