この頃、娘ぶー子は私より早く起きている。
夜遅くまでダンスの練習をしているので、疲れて風呂に入らず寝てしまうからだ。
そして朝風呂に入る。
「夜遅く」という部分を除けば、何て高校生らしい生活なのでしょう。
風呂の威力を改めて知ったのであった。
しかし激しい練習のせいで、足を痛めてしまった。
車で学校まで送って行く。
往復たかだか15分だが、ゲーム時間に換算したら結構な時間だ。
先週からなかなかゲームの時間を作れない状態になっているが、こういうものは、少ない時間でもコンスタントに続けなければ、離れていってしまうのだ。
ダンナのドラクエも、ハンドルを買ったカーレースのゲームも、とうとうしまい込んでしまったし、コツコツとミャイルを貯めていた「まいにちいっしょ」も、長いこと見ていない。
ハッ、まじめに、ゲームを続ける秘訣を語ってしまった。
しかし今日久々に手をつけたら、停滞していたストーリーが先に進んだ。
これだからやめられないのだ。
ゲームもやったしピアノも弾いた。
頑張れ、ぽ子。寝るんじゃないぞ。
テーブルの上を見たら、学校からの通信が数枚出ていた。
「学校徴収金の納入について」。
お~っ、そうそう、金額がわからなくて困ってたよ。
郵便局から引き落とされるから、忘れないように1年分入れておこうって言ってたんだった。
去年は8万ぐらいだったから、一応多めに10万。
ダンナが昨日銀行から下ろして、封筒に入れて持ってかえってきた。
しかし、通信の金額を見たら、今年は8千円程だった。はぁ??
そうだった、去年は修学旅行の分もあったから高かったのだ。
こりゃ、ずいぶん余るぞ。
黙っていれば9万、私のものになる。
たやすいなぁ~~、金儲け。
ダンナ、私を敵に回すと怖くてよ。フフッ。
ダンナを敵に回したくないから返すのだが。
テーブルの上にはカードの明細や領収書の類、ダイレクトメールや通販のカタログも出ていた。
これを片付けるのは意外と時間がかる。
明細や領収書の封筒には広告も入ってるし、時々オイシイ情報もあるからつい目を通してしまう。
それを必要なものとリサイクル紙類と燃えるゴミに分ける。
ダイレクトメールにカタログも然り。
新聞の折り込みもだ。
つまり「読む時間」だ。
読む。
こうして読んでいると・・・、
眠くなる。
ぽ子~、頑張れ~~~!!
ここで寝たらまた夜、眠れなくなるよーー!!
でもぽ子、座ってます。
お尻の「おねむスイッチ」、入ってます。
「寝ちゃダメ、寝ちゃダメ!!」と羽の生えた小さなぽ子が、右の耳で囁く。
「寝ちまえよ、寝ちまえよ!!」と尻尾の生えたぽ子が、左の耳で囁く。
「冷蔵庫にがんもどきの煮物があるよ!!」天使が必死に続ける。
えっ、あっ、そうだ、昨日の残りだ。
やっと私は立ち上がる。
「こら、ぽ子!!そんなものまずいに決まってるだろ!!」悪魔が焦る。
うるせー、作ったのは私だ。失礼なこと言いやがって。
こうして何とか生還を果たしたのだった。
午後の仕事から帰って来ると、ひどい事になっていた。
キッチンのコンロの上の鍋と、オイルポットが倒れて中味がこぼれていた。
エルはしっぽをピンと立てて「おかえり~~!」とすり寄ってきて、ラとミはダイニングのイスの上でかたまって丸くなっていた。
だ、誰だあ!!
みんな、しらばっくれやがって!!
こんな事もあろうかと、スープの鍋と肉の鍋は風呂場に避難させてあったが、お湯の鍋に油だぞ、どこが魅力なんだ。
昨日は昨日でナスを食われ、テーブルの上の醤油さしが倒されて、携帯の料金の領収書と明細と料理本が醤油漬けになった。
脱衣室に干したが、プンプン匂ってたまらなかったんだぞ。
しかし、猫は現行犯でないと、叱っても効果がないのだ。
「こんなところに置いておいた私が悪いのだ。」
私は敬虔なキリスト教の信者のように、繰り返した。
息を深く吸って気持ちを切り替える。
ピアノ、弾こ。
少しの時間でもコンスタントにね。
そして、ピアノを気が済むまで弾いてリビングに戻ると、カラムーチョが食われて床に袋だけ落ちていた。
「あう~~ん??」ラよ、お前か。
現行犯なら叱らずとも白状する、小心者だ。
ビビッて姿勢を低くし、こちらを見ている。
くぉのーーー!!
私はラを脇から抱き上げこちらを向かせ、「パプッ!!」「パプッ!!」と子音だけを思い切りかましてやった。
馬鹿馬鹿しい折檻だが、この程度にしておかないとエスカレートするとヤバい。
ラはPという子音を当てられる度に、目をキュッキュッと瞑る。
あぁもう、何でカラムーチョ・・・。
引き出しが開いている。
これからはカラムーチョですら避難させなくてはならないのか。
とんでもないヤツと同居しているぽ子一家である。
ひえっ、もう11時だ。
寝つきが悪い前提で、早く寝たかったのだ。
もう寝ます。
おやすみなさい。