人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

脱走

「ぽ子さん、ここ最近で一番心拍数が上がったのは、どんな時でしたか?」

唐突に上司アンガに聞かれたのは昨日の話だ。

心拍数・・。心拍数が上がった時ねぇ・・・。

「平和なんですね。」

うん、確かに平和ではあるが。

「小さいことでいえば、この職場に来る時にちょっとドキドキしたかな(笑)」

毎日、ギリギリなのである。

ところが今日、恐ろしく心拍数の上がる事態になる。

さて、昨日はやはりビール1杯では止まらなかったのだが、飲み過ぎという程でもないだろう。ビール1本、サワー3本。

ほろ酔いで気持ち良く眠りについたが、やはり飲んで寝ると眠りの質が悪いのか、朝は疲れが抜けずダルダルだった。

飲まなきゃ寝付けず、飲むと疲れが取れず。

さぁあなたならどっち?どっちもいらねぇ~~~!!

開き直ってパソコンの前に座る。

もう決まったはずのキャンプ場だが、いいや、もっといい所があるかもしれない。

私は家族のレジャーがより良いものになるように、骨を折るのだ、あぁ忙しい。

11時。本来なら今日の晩ご飯の下ごしらえにかかる時間だが、フフン♪昨日はケンタのチキンだったから食べなかったのね、だから作らなくても昨日の分があるのね。

「後は仕事から帰ってから~するだけ」という、最終段階を残すのみの状態になっている。

これによって1時間もうけたのだが、それでも今日の出勤も心拍数が上がるのだった。

仕事が終って家に着くとダルダル感もいよいよMAX、少し寝る事にした。

ベッドで寝ると本格的に寝てしまいそうだったから、リビングの隣のダンナの万年床でゴロリ。

なかなか寝付けず結局少し寝ただけで起きたのだが、「ニャオ~♪」と庭から猫の声。

お、近い、近いぞ。にゃんこのお客様だ。

「ニャンニャン♪」と声を掛けると「ンナー!!」と大きなお返事。

・・・ちょっと待てよ?

「ンナ~~!!ンナ~~!!」

似てる・・・。つーか・・・。

私は部屋中をグルッと回ってラの姿を探した。いない。

ゴッド、窓が少し開いている!!

慌てて庭に飛び出してみると、ラはまだ庭先にいた。

名前を呼びながら近づくが、近づいた分だけ進んでしまう。

しまいには隣の車の下に入って動かなくなってしまった。

どうしよう~~!!

お待たせしました、ここでやっと心拍数がドカンと跳ね上がるのですね。

とにかく近づくと逃げるから、うかつに近寄れない。

かと言って、待っていても鳴くばかりで進展しない。

ぽ子は途方に暮れた。こっちも泣きたいよ。

何とか秘密裏に連れ戻し何ごともなかった事にしたかったのだが、もうそうも言ってられない。娘ぶー子を呼びに行く。

彼女は部屋の床で寝っ転がってマンガを読んでいたが、ラの脱走を伝えると「ええっ!!」と飛び上がってすぐについて来た。

車の下で鳴いているラの姿を認めると、「ちょと待ってて!」と走って家に戻った。

何か策があるらしい。頼んだぞ、ぶー子、マイリトルガール、バット高校生。

洗濯カゴであった・・・。

ぶー子は何を思ったのか洗濯カゴを大まじめに持って来て、車の横に置いた。

「こうすれば入るよ!!」

そんなバカな話などないが、そう思いながらも実は「もしかしたら・・・。」と一緒に待ってしまった自分がちょっと情けない。

イスラムのアラーの祈りのように膝をついて車の下をぶー子と覗き込んでいたら、向かいのとよだあべ夫婦が買い物から帰って来た。

これはアラーの祈りではないことをわかってもらいたく、うちの猫が(今回はバカネコとは言わなかった)脱走した、と話した。

さすがとよだあべ家、猫を飼っているだけあって、「追い込もう」と猫追い祭りを提案してくれた。

程なくフン捕まえることができたのだが、上を見上げるととよだあべ家の猫が2匹、ベランダの柵に座ってのんびりこちらを見ていたので私はラを高々と持ち上げ、「捕まりました!!」と彼らに見せた。

あぁもうホントにビックリした。

ボケネコ・ラが自分で窓(正確には網戸であった)を開けるとは思えないから、私がキッチリ閉めなかったのだろう。

こんな調子だからオッチョコチョイだと言われるのだ。

車の窓を閉めていた時に、窓から顔を出して外の人と喋っていたので自分の首を挟んだことがある。

古い車で手動であったが、バカである。

ラはもう何ごともなかったように寝ている。

今後、気をつけます・・・。