猫と暮らす喜びのひとつに、「一緒に眠れる」ことが挙げられるだろう。冬が来て、我が家の猫も布団に入ってくるようになった。腕の中で無防備に眠る柔らかい塊は、私を暖かい気持ちにする。
寝室に入る。
エアコンをつけてしばらくは本を読んでいる。猫達はまだ、思い思いの場所にいる。
エアコンと電気を消しても、彼らはまだ来ない。先に寝るよ。オヤスミ。
一体それは何時頃なのだろうか。私は唐突に大五郎に起こされる。
軽く爪を立てて、私の顔をチョンチョンと叩くのだ。
眠い。猛烈に眠いが、布団に入れないと大五郎の要求は止まらない。私は寝ぼけたまま、布団を持ち上げる。大五郎は私の右側に入る。
大きな大五郎。
大きな大五郎が小さく丸まって、私の右側で眠る。
私の脳内に、幸せ物質が噴出する。
そのまま私も再び眠りに入る。
やがて今度は、左側をつつかれる感覚で目が覚める。
今度はエルだ。
仲の悪い2匹なので一緒に寝ることはなく、こうして左右に定位置が振り分けられている。
眠い。眠いが、エルのご機嫌を損ねたくない。頑張って今度は、布団の左側を持ち上げる。
エルはゆっくり考えてからまず頭を突っ込み、しばらく片手を舐めている。謎の儀式だ。早くして欲しいんだが。
ひとしきり手を舐めるとやっと中に入り、丸くなる。しかしまだ油断はできない。完全に落ち着くまで、下手に動くと「じゃ、シラネ」と出ていってしまうことがあるのだ。
とんだお嬢様だ。大五郎と違い、気を遣う。
これで2匹が左右に落ち着くと、今度は私が落ち着かない。脇の下に二匹がガッチリ入り込み、身動きができないのである。
動けないと思うと、動きたくなってくるのはなぜなんだ。
私は今、左右に二つの幸せを抱えている。「快」と「不快」の狭間を彷徨いながら、私はまた、眠りに落ちる。
エルの寝入りはこのように厄介だが、寝てしまえばそのまま朝までノンストップだ。
しかし大五郎は、何度も出たり入ったりを繰り返す。その度に顔をチョンチョンされ、布団を開けなくてはならない。
幸せは、簡単には手に入らない。
それでも、幸せが不快を上回ればいい。
ふたつの塊を感じながら、私は暖かい。