人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子56歳。

願いが叶う時

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*続きになっています。ミツコですをお先にどうぞ。

 

 

生まれた時から食べられてしまう運命なのです。私達はみんな、生まれた時から覚悟はできています。

 

 

南の大地の、太陽の眩しい国に生を受けました。

背の高い木にぶら下がり、私達はたわわに実りました。

ここで収穫され、どこか遠い国に行く。それは私達の憧れでした。間違えても猿なんかに食べられたくはありません。できれば豊かな国の暖かい家庭に行き、笑顔で私を迎えて欲しい。

 

願いは叶いました。

私は3人の兄弟たちとひとつの袋に入れられて、日本という国にやって来ました。

袋に入った時はまだ緑だった私達も、お店に並ぶ頃には綺麗な黄色になっています。

貧乏くさいばばあが、良く選びもせず私達を掴んでカゴに入れました。できれば「選ばれた」という出会いがしたかったけれど、お金を出してまで求められてことに感謝することにしました。

 

貧乏臭いばばあは、この家の奥様でした。

奥様は私達を「常温ジェット」と呼ぶ方法で、保管しました。つまり、出しっぱなしです。温かい方が甘くなると信じているのです。

旦那様は毎朝「バナジュー」と呼ばれるジュースを作っていて、どうやら私はミキサーにかけられて終わるようです。

覚悟はできてました。猿よりはまし。私は人間の手によって、求められて、この世を去るのです。

 

ところがある晩、みんな寝静まってしまった頃に、私は引っ張り出されました。

犬です。

ばかに浮かれた犬が、私をリュックサックに入れたのです。

ヨダレを垂らして今にでも食いつきそうな勢いなのに、なぜか私はリュックに入れられました。

犬はその後、カンロ飴とかっぱえびせんを上から突っ込んで来ました。みんな一様に、悲しそうな顔です。中には「犬かよ・・・。」と言ってるのもいました。

正直私も「犬かよ」とは思いましたが、猿よりはまし。もうそう思うしかありません。

 

朝になりました。少し眠ってしまったようです。

リュックが開けられ、いよいよその時が来ました。

犬に食べられるのとミキサーにかけられるのと、どちらがいいのかしら。

私達に痛覚はありません。プライドの問題です。

ところが犬は、私をもとにあった場所に戻しました。気が変わったのでしょうか。

見ると、犬は泣いていました。

 

結局私は、旦那様のミキサーにかけられることになりました。

猿に食べられることもなく、腐って捨てられることもなく、夢が叶うのです。

でも今は、犬に食べられた方が良かったのかな、そんな風にも思っています。

 

犬は泣いていました。