人間は、不足したものを自然に補おうとするのだろう。
例えば二日酔い。
アルコールの摂り過ぎで、脱水症状を起こしている。翌日はあり得ないほど喉が渇いているものだ。
これもまた酒絡みになるが、飲んだあとのシメもそうである。激しく炭水化物(糖質なのか??)を欲する。結果、和蔵や和でスープまで飲み干して帰ってくるのである。
その頃私は、ガスパチョの虜になっていた。
こじらせた風邪も治り、やっとこれで普通の生活ができると張り切ったのも束の間、今度は暑さでダウンした。
食欲もなく(ないのに何でも食べられてしまうのがミソだ。痩せはしなかった)、ただひとつ猛烈に欲していたのがガスパチョだったのである。
別にトマトなど好きではない。
むしろ酸っぱいので敬遠していたぐらいだ。
それなのにあのフルーティな酸味を体が欲しがってやまないのである。
ただのトマトではダメだ。
ドロッと濃厚なスープ。しっかり冷えて、喉越し抜群な。
寝っ転がって、スマホでクックパッドを検索する。
スマホに変えて良かったことのひとつは、このように寝ながらにしてインターネットができるようになったことである。
ところがどれだけ調べても手作りのガスパチョは、ミキサーやフードプロセッサーを使うようなレシピしか出てこない。
クソ、病人向けはないのか、と検索ワードの「ガスパチョ」に「簡単」を付け足す。
それでも、どうしてもミキサーのような機械を使うレシピばかりだ。
「ミキサーに入れるだけ」などと言うが、ミキサー出してくるのが大変なんだよEE:AE4E5
もう手作りは諦める。買うと高そうなんだがな。
重い体を引きずって、一番近いスーパーへ行く。
ガスパチョの売り場はどこなのか?
そもそもガスパチョなんて買ったことがないのだ、どんな状態で売っているのか??
缶詰の売り場、ない。スープの売り場、ない。パックの売り場、ない。
店員に聞こうにも、「ガスパチョありますか?」というのはなぜか途方もなく恥ずかしい。なぜガスパチョ?
だいたいそこの若い男の店員など、ガスパチョなどと言っても分からない可能性がある。
問いかけが伝わらないという事態は「説明」に続き、挙句「ありません」ときたら、どうにもバツが悪い。
もういい、ガスパチョは。もうちょっと可愛らしい名前だったら、私も聞きやすかったのに。
翌日。
まだ本調子ではなかったが、前日よりはマシになっていた。
そして相変わらず体は、ガスパチョを欲していた。
どれ、体のために頑張ってガスパチョを作ってみるかの。
たくさんあるレシピの中から私は、できるだけ濃厚そう、かつ、セロリを使わないものを選んだ。
酸っぱくて私を泣かす生トマトは不使用、水煮缶のガスパチョだ。
そこにきゅうり、パプリカ、玉ねぎ、ニンニク、オリーブオイルにバルサミコ酢。
これをフードプロセッサーでガー。
涙が出るほど美味しかったEE:AEB64
調子に乗って今度は、長芋と新玉ねぎのスープもガーッとやって作ってみた。
マジうまいEE:AEB64
これはクセになるぞ。
野菜がたっぷり溶け込んでいるし、これで夏を乗り切れるかもしれない。
次に控えているのは「きゅうりのガスパチョ」である。
ミキサーの保管場所を変えることを検討中。