相変わらずエル嬢は、ご機嫌斜めである。
その晩も一緒に寝ようと連れてきたが、落ち着かず、苛立っているように見えた。
なのでカーテンを開けて、外を見せてあげようと思ったのだ。
猫は、外を眺めることが好きだ。
ただエルは体が小さいので、高い窓べりに出るのにちょっと苦労する。そのせいか、大五郎ほど外を見ている姿を見ることはないのだった。
しかしこうしてカーテンをめくってみると、やはり興味を示す。
結果的にエルは誘いに乗らず、私はアホみたいにひとりで寝ながらカーテンをまくっていた。
空が見えた。
住宅地だ、寝ながら見える範囲のほとんどが向かいの家だが、その上に広がる空に、ぽっかりと丸い月が見えたのだ。
不思議な気持ちだった。
月を見ることは多いが、こうして横になって見ることなどほとんどない。
人間が屋根の下で寝るようになって久しいだろうが、もともともっと月は近くにあったはずである。
満点の星空の下で眠りに落ちていたのは、一体どれほど昔になるのか。
キャンプに行きたくなった。
自然を肌で感じながら、炭火の温かい明りを囲んで過ごす夜。
今を生きる私達には、せいぜいこれぐらいが限界である。
そんな夢を抱きつつ、自粛解除になるのを待つ。
延期かなぁ~。