人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

大人の「責任の取り方」

父と兄と会って、飲んだ。

母が亡くなってから、割と頻繁に会うようになったのだ。

私も兄も忙しいが、やはり父を放ってはおけない。

むさくるしい父が、トレンチコートの中にペイズリー柄のスカーフなぞして現れ、ちょっと嬉しくなる。

「母とは必ずまた会えると思うようになったから、全然悲しくなくなっちゃったんだ。」と言ったら、父は泣いてしまった(笑)

また会えるという考えか、それとも私が悲しくなくなっちゃたからか。

考えてみれば、良く分からん涙であった。

家族として多くの時間を過ごした間柄である。昔話になると、話は尽きない。

お互いにこの歳になると体裁を繕う必要もなくなり、裏話的に「あの時は」、「実は」というような話が出て来るのが面白い。

昨日聞いた驚きの話は、「ゴルゴ13」であった。

父は定年間近まで、出版社に勤めていた。

あのような性格なので、「鬼課長」として恐れられて(疎ましがられて?)いたらしいが、人付き合いは好きで、あまり家には帰って来なかった。

その頃良く一緒に飲んでいた部下が、ある時、マンガの「ゴルゴ13」を勧めてきたという。ダンボールにいっぱいのコミックが我が家に送られてきた。

私も覚えている。父の部屋のダンボール。2つぐらいあったんじゃないかな?

マニアックなファンだったとのことで、彼が必死で集めた珍しいものもなかには含まれていたという。

それがある日突然、消えたというのだ。ダンボールごと。

「ぽ子、お前捨てたか??」

「はっEE:AEB2Fなんで私がEE:AE5B1私も読んでたのに(笑)」

「じゃ、お兄ちゃんか。」

「オレも読んでたし(笑)」

「やっぱりお母さんか。」

聞けば母が父のダンボールを勝手に処分したのは、初めてのことではなかったらしい。

肝心な部分を言わなかったので、理由は分からない。いくらなんでも勝手に捨てるとは考えにくい。

邪魔だからどうにかしろ、ぐらいの警告はあったんじゃないかと思われる。

「で、どう落とし前をつけたのEE:AEB2FそれメチャクチャやばいんじゃないのEE:AEB2F

「そうなんだよ、俺も困っちまってよー。」

「ちょっと、聞くのが怖いEE:AE5B1

「このままにしておく訳にもいかないから、呼び出したんだよ。飲みに行ってさ。」

「(ドキドキEE:AE5B1)」

「で、な。『本当に済まない。』ってな。」

「でEE:AEB2F

「そしたら向こう、『え、もしかしたら』ってな。」

「すぐ分かったんだEE:AE482で、結局どう責任とったのEE:AEB2F貴重なのも全部なくなっちゃったんでしょEE:AEB2F

「そりゃあ俺も会社の上司としてだな、やる時はやる。」

弁償?あんなにたくさんあったのだ。一体いくらぐらいのものなのか、もはや明確にはできないだろう。

「こうしてな、・・・。」

父はそこでテーブルの上を少し空けて、おもむろに手をついた。

「『本当に、済まなかった』。」

・・・・・・・・・・・。

「えっ、土下座EE:AEB2F

「そう。」

「それだけEE:AEB2F

「そうだ。」

これが昭和の正しい解決法なのか、私には判断できない。

しかし力の弱い者が理不尽な思いをするということは、いつの時代もあまり変わらないようである。

私も土下座して差し上げたい。