ゴールデンウィークのど真ん中、私達夫婦は娘ぶー子の家へ遊びに行くことにした。
子猫が増えて、早く見せたいらしい。
正月も会ってないし、ダンナは仕事だったが夜から会いに行ったのだ。
仕事のダンナは置いて、私は先にぶー子と落ち合うことになった。
家の場所は何となく覚えていたが、ぶー子の方からもこっちに向かってくれると言うので、駅を降りたら適当な場所から電話をしてみる。
「今どこ?」
「・・・ていう交差点。」
「交差点??名前とか良くわかんないなぁ。」
「角にチャーハンのお店がある。」
「チャーハン、チャーハン・・・・・、あ!職業イケメンのところか!」
職業イケメン!?
そんな店があるのかと見渡してみるが、見当たらない。
「そんなのないよ。」さすがにこの雑踏の中で「職業イケメン」とは言えない。
「違うか~~。えーと、じゃあどこだろ、えーと・・・。」
「弁当屋さんがあるよ。あと、・・・あ。」
職業イケメン、あった(笑)店ではない、看板だ。大きな看板。
「あった!あったよ、職業イケメン!」
「そうか!そのイケメンを背中にすると、どっち側にいるの??」
言葉にするのがためらわれたが、言わない訳にはいかないだろう、イケメン。
「イメケンの向かいになるかな!」
「え?イケメン側?!」
「じゃなくて、イケメンの見える方!」
恥ずかしかったであります。
ダンナが来るまで、ぶー子の家に近いいつもの焼き鳥屋で飲む。
相変らず饒舌だ。
喋りながら食べたからか、突然喉をカッカッと言わせて「引っかかった」と言い出した。
「引っかかってる、引っかかってる、今まさに喉と気管支の狭間、喉桶狭間、これ喉桶狭間の戦い、んぐっ・・・、武田信玄勝利。」
「桶狭間ってEE:AE5B1」
「いやぶっちゃけ桶狭間が何か知らないんだけど、周りバカばっかだから、これでウケる。」
親もバカであった。今調べたら、信玄ではなく織田信長であった。
「見てこれEE:AEAAB」
ぶー子が仰々しくバッグから取り出したそれは、小瓶に入ったこんぺいとうであった。
どう返したらいいのか、分からん。
「こうぺいとう・・・、好きなの??」
「いや、綺麗じゃない??EE:AEACDてか、モンハンでこれに似たアイテムがあるのよ~!」
私がモンハンにハマッていたのは、8年前。
当時ぶー子は大学生でまだ一緒に暮らしていたが、彼女は私の洗脳の甲斐もなく、何度か付き合ってもらっただけで終わっていた。
それが今、開花しているのである。複雑な気持ちだ。
あとから来たダンナにもこんぺいとうを見せていたが、モンハンの話にも美しさにも触れることなく「へ~、一個ちょうだいEE:AE471」とサラッと言ったのでぶー子は絶句した。
「え?まぁ別にいいけどEE:AE4E6」
恐らくぶー子の中でそれは、食用ではなかったのだろう。
ダンナは「懐かしい味がする。」と言って、居酒屋でこんぺいとうを舐めていた。
お酒をしこたま買い込み、ぶー子の部屋へ移動する。
実はもうモンハンは少し飽きて来ていて別のゲームに心変わりしようというところのようで、そのゲームの鑑賞だ。
つまらないと思うだろう。
面白いのだよ、これがEE:AEB64
「Dead by daylight」、これもまたオンラインゲームだ。
タバコをくわえながらゲームのコントローラーを握り、熱くその実況をする。
長い時間をかけて私がこの娘に伝えられたことは、何だったんだろうか。
いや、自分にソックリである。全て伝わったことだろう。
これを矯正できないことは、コピー元である自分が良く分かっている。
自分を大事にしてくれ。これだけは言っておく。
こんなぶー子も今、生活の転換を図ろうとしている。
もしかしたら、この街に戻ってくるかもしれない。
新しいステージに、期待したい。