そう、「酒漬けOL」の部分に惹かれて読んでみたのであるが、そこを期待するとハズレだ。
確かに主人公のOLは酒漬かりではあったが、本筋とはまるで無関係である。
タイトルが違えば、それはそれで楽しめた作品だと思うと惜しい。
威圧的な上司のもとで働き、人の尻拭いばかりさせられてきたOLマリモは、ストレスから酒に逃げていた。
二日酔いで職場に赴き、上司の顔色を窺う毎日。
本当はコイツは間違っている、こんなヤツは嫌いだ、という気持ちを封じ込め、自分自身を騙してやり過ごしていたが、同僚の坂上君は、そんなマリモの性格を見抜いていた。
「納豆伝説」などという、絶対に売れないだろう製品を手がけることになったマリモ。
不本意ながらも、やるしかないと腹をくくるが、結局は上司の思惑に飲み込まれ、失敗に終わる。
別に会社なんて辞めてしまえばいい。
しかしそれは、たったひとりの理解者、坂上君を裏切ることにもなるのだ。
自分が傷つかないために、現実を見ようとしないマリモの自己防衛は共感できるものがあった。
世の中には無神経で、人を足蹴にして平気な人間もいる。
それに対して誰もがきちんと声を上げられる訳ではないのだ。
無理に自分を納得させ、表面的に丸く収めることは「逃げ」になるのだろうか。
このような弱者によって成り立っているということに、強者は気づいていない。
マリモは若い頃の環境から自分を押し殺すクセがついていたために、生き辛い人生を送っていた。
そんな中、高校の恩師との思い出だけが心の拠り所であった。
しかし、それもマリモの助けにはならない。
マリモはもがく。
いわゆる「弱者」の側にしかマリモの生き辛さは理解できないと思う。そういう部分で、人を選ぶ作品かもしれない。
私は興味深く読んだ方だと思うが、ひとつ。
チャラチャラした文章がかなり鼻についた。
そういうカラーでいくなら、サブタイトルの期待に応えていっそ「酒漬かり」の部分にスポットを当てて欲しかった。
ぽ子のオススメ度 ★★★☆☆
「マリモ~酒漬けOL物語~」 山崎マキコ
新潮文庫