ドストエフスキーでかなり消耗したので、軽いのを読みたかったのだ。アホほど軽いのを。
「キミは他人に鼻毛が出てますよと言えるか」。
ふざけているようなタイトルだが、これは大きな問題だ。私は言えない。できれば言われたくもない。
著者はこのような「小さな勇気」が必要なことに、挑戦することにしたのである。
初対面の人に鼻毛が出ていることを教えてあげる、電車で隣り合わせた人と仲良くなる、人前で自作の詩を朗読する、「42歳フリーライター」が就職を試みる、公園の子供と仲良くなる、電車内のマナー違反を注意する、etc・・・。
簡単なようで難しいことだ。自分でやってみようと思えば想像がつくと思う。
もう読んでいる方も目を覆いたくなるような過酷な挑戦だ。
しかし著者の北尾氏は、やると決めたらとことん貫いていくのだ。こっちが冷や汗である。
解説のえのきどいちろう氏の言葉を借りると、この本は「少年の好奇心」と「大人としてのなけなしの勇気」を駆動力にして、「中年男が出さずにいた勇気を出す」というノンフィクションである。
面白半分に読むつもりが、自分にできることは何なんだろうかと考えさせられた。
でもやっぱり鼻毛は言えない(笑)
最後には、北尾氏を含む友人や多くの金融業者からの借金を踏み倒して失踪した男を捜す話が載っていた。
若干趣旨が違うが、こちらも面白かった。
ぽ子のオススメ度 ★★★★☆
「キミは他人に鼻毛が出てますよと言えるか」 北尾トロ
幻冬舎文庫