人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

シフォンケーキ、最後の日

土曜日の昼下がり。

いつもならラーメンでも食べに出ている頃だが、繁忙期でダンナは出勤である。

リビングには私と娘ぶー子が、この空間をどう埋めようか考えていた。

「アイス食べたいなぁ。」

ここ数ヶ月のぶー子の体重増加は、凄まじいものがある。

こういう場合私はいつも「痩せる気あるのか?」と聞くが、彼女は必ず「あるあるEE:AE595」という。

ならなぜいつもそのように、甘いものばかり食べているのか。

仕事もしないでブラブラしているのなら、材料費は出すからオヤツぐらい自分で作ってみろと。

しかし私自身はオヤツなどどうでもいいのだ、あまりお金をかけたくない。

そこで思いついたのが「シフォンケーキ」であった。

一時期良く作ったが、プレーン以外はうまくできないのでそのうち作らなくなってしまった。

材料は、卵と小麦粉とグラニュー糖だけである。これで大きなシフォンケーキができるのだ。

彼女は意気揚々と、業務スーパーに向かった。

ぶー子がシフォンケーキを作っている間、私はゲームをやった。

粉を量ったり卵白を卵黄と分けたり面倒そうだったが、そういう作業はあまり苦にならないようである、おとなしく一人で作っていた。

それがしばらくすると、「はぁ、あー・・・。」というような声がため息混じりに聞こえるようになる。

見に行くと、卵白を泡立てるのに疲れ果てていた。

ミキサーはあるのだが、「痩せるために自力でやる」と言い張ったのだ。しかし泡立て器を回してみると、まだまだ先は長そうである。

ここからは交代作業だ。

泡が立つにつれ、卵白は硬く重くなっていく。

完成が近づけば近づくほど、負荷がかかるのである。

かなり疲れたが、疲れたのは右腕だけで、痩せるとは思えないあたりがまた辛い。

3回ずつ交代して腕を鍛えたあたりで、やっと泡はフワッフワに仕上がった。

ここで私はまたゲームに戻ったので、この後どうやって作ったのかは分からない。

やがて香ばしい匂いがしてきて、次に見に行くと、シフォンの型は逆さにして冷ましてあった。

完成だ。

フワフワで軽いシフォンケーキは、出来栄えは良かったのだろうが、プレーンのケーキだ。ぶー子には物足りなかったようで、「・・・何だかただのスポンジケーキみたい・・・。」と不満そうである。

少し食べたら「甘くて気持ち悪くなってきた。」と言って食べるのもやめてしまった。

私はこの後すぐに出かけたのだが、朝になったらケーキは綺麗になくなっていた。

私とダンナで酔っ払って一気に食べてしまったのだ。

ぶー子のために言う訳じゃないが、シフォンケーキ、旨かった。

ゴテゴテついてないのがかえって良かったのだろう、ペロリと食べてしまったのだ。

美味しかったが、危険だ。なぜあんなに大きな型を買ってしまったのだろう?

次に食べるのはいつになるだろうか。

ぶー子が作らなければもう食べる日は来ない気がする。

これが最後になる予感。