土曜日の昼下がり。
いつもならラーメンでも食べに出ている頃だが、繁忙期でダンナは出勤である。
リビングには私と娘ぶー子が、この空間をどう埋めようか考えていた。
「アイス食べたいなぁ。」
ここ数ヶ月のぶー子の体重増加は、凄まじいものがある。
こういう場合私はいつも「痩せる気あるのか?」と聞くが、彼女は必ず「あるあるEE:AE595」という。
ならなぜいつもそのように、甘いものばかり食べているのか。
仕事もしないでブラブラしているのなら、材料費は出すからオヤツぐらい自分で作ってみろと。
しかし私自身はオヤツなどどうでもいいのだ、あまりお金をかけたくない。
そこで思いついたのが「シフォンケーキ」であった。
一時期良く作ったが、プレーン以外はうまくできないのでそのうち作らなくなってしまった。
材料は、卵と小麦粉とグラニュー糖だけである。これで大きなシフォンケーキができるのだ。
彼女は意気揚々と、業務スーパーに向かった。
ぶー子がシフォンケーキを作っている間、私はゲームをやった。
粉を量ったり卵白を卵黄と分けたり面倒そうだったが、そういう作業はあまり苦にならないようである、おとなしく一人で作っていた。
それがしばらくすると、「はぁ、あー・・・。」というような声がため息混じりに聞こえるようになる。
見に行くと、卵白を泡立てるのに疲れ果てていた。
ミキサーはあるのだが、「痩せるために自力でやる」と言い張ったのだ。しかし泡立て器を回してみると、まだまだ先は長そうである。
ここからは交代作業だ。
泡が立つにつれ、卵白は硬く重くなっていく。
完成が近づけば近づくほど、負荷がかかるのである。
かなり疲れたが、疲れたのは右腕だけで、痩せるとは思えないあたりがまた辛い。
3回ずつ交代して腕を鍛えたあたりで、やっと泡はフワッフワに仕上がった。
ここで私はまたゲームに戻ったので、この後どうやって作ったのかは分からない。
やがて香ばしい匂いがしてきて、次に見に行くと、シフォンの型は逆さにして冷ましてあった。
完成だ。
フワフワで軽いシフォンケーキは、出来栄えは良かったのだろうが、プレーンのケーキだ。ぶー子には物足りなかったようで、「・・・何だかただのスポンジケーキみたい・・・。」と不満そうである。
少し食べたら「甘くて気持ち悪くなってきた。」と言って食べるのもやめてしまった。
私はこの後すぐに出かけたのだが、朝になったらケーキは綺麗になくなっていた。
私とダンナで酔っ払って一気に食べてしまったのだ。
ぶー子のために言う訳じゃないが、シフォンケーキ、旨かった。
ゴテゴテついてないのがかえって良かったのだろう、ペロリと食べてしまったのだ。
美味しかったが、危険だ。なぜあんなに大きな型を買ってしまったのだろう?
次に食べるのはいつになるだろうか。
ぶー子が作らなければもう食べる日は来ない気がする。
これが最後になる予感。