ソワソワしていた。
まるで恋人からの初めての誘いを待つように、朝から、そして昼にはドキドキし始め、夜が来ると私は決心した。
飲むぞ。
魔の水曜日であった。
毎週毎週「今週こそは金曜日まで飲まない」と思うのだが、ここで折れる。
人のせいにする訳じゃないが、だいたいダンナが水曜になるとあたり前のように飲むのだ。
私のように心が華奢な人間は、簡単に負ける。
しかし、いよいよ体のあちこちが、少しずつ変調をきたし始めていた。
爆飲みからの回復も遅く、疲れがなかなか抜けない。
一度体の中に溜まっている毒素を抜きたい。
良く休肝日は連続して二日などと言うが、4日も酒を飲まなければかなりいい感じに濾過されてくれるだろう。
本当に今週こそ「今度こそは」であったのだ。
それにしても、水曜の壁は厚い。朝からソワソワだ。
月火木さえ飲まなきゃ上等、というサイクルを、長年かけて体が覚えこんでしまったのだろうか。
そして私は、ダンナに話したいことがたくさんあった。
この頃の陽気に私の頭の中にも春が訪れ、キャンプやピクニックの事ばかり考えている。
そして、猫がボロボロにした壁をいよいよリフォームする方法を考えついたのだ。
こういう話には酒が欠かせない。
話したいことがあるたびに酒を飲んできたのだ、こちらもしっかり体がその繋がりをインプットしていたようである。
夜になるとムラムラしていた。
女43歳・サンタイザベル・ぽ子をムラムラさせるものは、酒なのである。
しかし、9時になっても10時になっても、ダンナからメールは来ない。
ムラムラはもう「しょんぼり」にまで形を変えてしまったので、嫌な過去を忘れるようにゲームのスイッチを入れ、そちらの世界に没頭することにした。
ダンナが帰ってきたのは12時を回ってからであった。
繁忙期である。
風呂から出たら12時半、やはり飲みたかったであろうダンナもすっかりあきらめ顔で、ノンアルコールビールをグラスに注いだ。
「カ~~ッ、旨い!」ダンナはほとんど飲み干して、ガン、とグラスを置いた。
「オイシイEE:AE595」私も続く。
この頃のノンアルコールビールはなかなか良くできていて、努力次第で自分をだますことができる。
喉越しだ。
アルコールを味わうのではなく、喉越しを楽しむのだ。
しかし昨日は、キャンプの話も壁の話もしなかった。
この高揚感にはニセモノではついてこれないのである。
木曜まで来てしまえばあと一日だ、頑張れる。
5日目の酒は、ざそかし美味しいことだろう。
繁忙期、万歳。
繁忙期が私の肝臓に閑散期をくれたのだ。