お前は一体何をしているのだEE:AE4E5
イライラしながら仕事に向かったが、帰って来ても起きてくる気配はなかった。
娘ぶー子、20歳。
学校を退学したばかりのプー太郎である。
「やりたいことがある」と大きな事を言って大学を中退したが、その後はたまにバイトに行く以外は遊びに行ってるか寝ているかである。
昼夜逆転もしかかっており、放っておけば平気で夕方まで寝ている。
私はニートを養う気など、サラサラない。
努力をして働けないのなら理解できるが、働こうという意思が見えない人間を甘やかすつもりはない。
人間は、いつか自分の力で生きていかなくてはならないのである。
そしてぶー子はその道を選んだのではないか、一時的にせよ。
「何やってんのよ、アンタは!!」
堪忍袋の尾が切れた私は、仕事から帰ると一直線にぶー子の部屋に向かった。
ぶー子はベッドで寝たまま携帯をいじっていたが、私の怒りの気配を感じ取ると「ああウルサイ」というように背を向けた。
注いでくれたね、エナジーをEE:AE47B
その態度は何だ、アンタは一体何をしてどうするつもりなんだ、と私は一気にまくし立てた。
やる気のなさそうなぶー子の返事がますます私を煽り、私の声もどんどん高くなる。
「お父さんだってね、ぶー子がやりたい事ができたから学校を辞めるって言った時も、応援してあげようって、ずっと見守ってたんだよッ。それを、」
「それをアンタは踏みぬずっ・・・、」
「踏むにじっ・・・、」
「ふっ、踏み・・・。」
「・・・・・。」
「・・・・・。」
沈黙が流れた。
やがてぶー子はプイッと顔を背けたが、その口元が大きく歪んでいたのが見えたので、たまらなくなって、わざと「踏みにゅじってだねえ!!」と言ってやった。
終わった。
怒りに任せて言葉を吐き出すと、このように嚙んだり訳が分からなくなったりしてしまう。
もう1回「踏みにぎってっ!!」と言ったらぶー子は、「もういいよ!!」と言ってついに笑い出した。
で、私の殺気にあてられたぶー子は、仕方なくパソコンで職探しを始めた。
しかし「あ、もう、このペン出ない!!」とすぐに滞り始めた。
「いちいち書き出さないで、『お気に入り』に入れていけばいいじゃん、時間の無駄だよ。」と言ってやったが、「ウルサイッ、私には私のやり方があるのッ!!もうゴチャゴチャゴチャゴチャと!!」と言って取り合わない。
ぶー子は「このペンじゃなきゃダメなのに・・・。」とブツブツ言いながら自分の部屋に戻り、新しいペンを持ってきた。
見ていると、洒落たノートにいちいち飾り文字など入れながら、気になる店をノートにリストアップしている。
何たる無駄。
「新しい手帳を買わなくちゃ。テンション下がっちゃうからね。」
それも無駄。
「美容院で髪も染め直さないと。」
無駄過ぎる。
どうでもいい部分にばかり気合が入り、なぜ肝心な店のリストの方は伸びていかないのか。
結局書き出した店は2軒(1軒は私がせっついて探させた)、夜にもかけもちで働きたいと言ってきらびやかなバーの名前が数軒(むしろこっちの方を楽しみにしている感がある)、それで終わってしまった。
今日仕事から戻ってくると、ぶー子はいなかった。
よしよし、活動しているか。
しかし、家に帰ってきたぶー子は、新しい毛染めを手にしていただけであった。