停電の影響で、勤務時間が変更になっている。
9時~2時で定着しそうだが、昼の休憩をまたぐので、一度家に帰らなくてはならなくなった。
会社で弁当を食べている人もいるが、家の方が屁もこけるし、猫のご飯もあげたいので帰っている。
それにしても、凄い強風であった。
家に戻る時にはそれ程でもなかったのだが、再び会社に向かおうと思ったら、自転車がなかなか進まないのである。
時に横倒しにされそうになりながら、私は必死にペダルを踏み込んだ。
いつも時間ギリギリなのである、これは予定外であった。
ちょうど家と会社の真ん中ぐらいに来た時、かぶっていた帽子が風に飛ばされてしまった。
自転車を止めて振り向くと、さらに道路のド真ん中にまで風に流されていた。
気に入っていた帽子である。取りに行きたいのだが、車の往来が多くて道路に出られない。
しかも時間はギリギリなのである。
私は諦めて、泣く泣く会社に向かったのであった。
帰りは約1時間後である。
諦めきれずに今度はゆっくり同じ道を帰っていたが、果たしてあのグレーのタオル地のキャップは、道路の隅に転がっていた。
おお、ぼうし子ちゃん、待っててくれたのね。
1時間前とは打って変わって砂埃まみれであったが、打ち捨てられたゴミのような姿になってもそこにいてくれたことに感動だ。
しかし汚れてしまってはいたが、目だった外傷はなかったので、洗えばまた元のようにつき合っていけるだろう、ぼうし子ちゃんよ。
これはめでたく再会を果たしたケースだが、悲しい話もある。
ある日、ダンナのカードケースについていたストラップの異変に気がついたのだ。
確かカエルの小さなストラップで、何かのオマケかなんかだったはずである。
ちょうどEE:AE4DA←こんなような感じの、可愛らしいものだった。
それがないのだ。ヒモだけになって。
「あれ?カエルちゃんは?」
可愛いカエルだったので、見るたびに「可愛い」「可愛い」と言っていたのだ。なくなれば気付く。
するとダンナは「ああ・・・。」と悲痛な声を出した。
「電車の乗りかえで階段上ってた時に・・・。」
すごく混雑していたらしいのだ。
歩きながらそのカードケースを出したら、その時にカエルだけ切れて落ちてしまったらしい。
「あーっ!って思ったんだけど、人が凄くて流れに逆らえなくて・・・。」
カエルちゃん・・・EE:AEB69
カエルちゃんに後ろ髪引かれながらも、先に進まなくてはならなかった夫。
BGMは竹内まりあの「駅」だ。
カエルちゃんのその後を想像すると、胸が痛む。
物との別れも、時に人間との別れのように辛い事もあるのだ。