人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

ジュースは飲みますか?

もう何年越しになるだろうか、歯医者通い。

痛がって先に進ませない私が悪いのだが、痛いものは痛いのだ。

遊び半分で痛がっている訳ではない。

通常の治療の前に、助手である先生の奥さんが私の口の中を覗いてチェックをする。

自慢じゃないが、「いいですね。」などと言われたことは、ただの一度もない。

時間がなくて適当にしか磨かないで行く事もあるが、「これで文句はあるまい」と言う程磨いて行っても、必ず難癖をつけられるのだ。

磨き残しを指摘されるのがもはやノーマル、通常のパターンである。

そのたび私は、次までにそこをきちんと磨けるようにしていく。

それなのに、「ここが虫歯になりかかってます」ともう2ヶ所も予備軍を作ってしまった。

これでも努力はしているのだ。

そりゃ飲んだりした晩は、面倒で磨かずにモンダミンのうがいだけで寝ちゃったりするが、私は過去にこんなに真剣に歯磨きに取り組んだ事はなかった。

普通の歯ブラシで磨き、その後細い歯ブラシで磨き、次には糸ようじでこすり、最後に歯間ブラシでしごく。

注意された場所は念入りに、私は奥さんの言うがままに頑張ってきたのだ。

しかしある日、歯を磨いていたら激痛が走った。

キーンと神経を刺激する鋭い痛みであった。

ついに予備軍が立派な成虫に成長したか。

私は次の予約日まで我慢をしてから、とうとう痛い、ムチャクチャ痛い、と訴えた。

ところがこれは虫歯ではなく、知覚過敏とのことであった。

磨きすぎて歯が削れてきているというのだ。

もう涙が出そうである。

磨けと言うから磨いた。

しごけと言うからしごいた。

忠実に守っても虫歯の予備軍は生まれ、頑張れば頑張るほど歯が削れていく。

「歯磨き粉、ナシにしませんか。」

次なる指令はこれであった。

歯磨き粉には研磨剤が入っているので、歯が削れやすいと言うのだ。

何だかヨダレで歯を磨くみたいで抵抗があったが、モンダミンでごまかしていく事にした。

先週は風邪を引いてキャンセルしたので、今日は久しぶりであった。

今回はしっかりフルコースで磨いてから行った。

奥様の下で口を開くと、「ん?」と言って彼女は手を止めた。

ん?・・・って(汗) 初めてのリアクションである。

「ジュースは・・・、飲んだりします?」奥さんが聞く。

ジュース?二日酔いなら・・・と私が答える前に、「いや、ぽ子さんはお酒よねぇ。」と真面目に彼女は言った。

「ここ、見て下さい。」

奥さんが細い棒で歯をカリカリこすった部分は、白い線が入っていた。

「これはジュースなんかをたくさん飲んだりするとこうなっちゃうんですけど・・・。」

私は飲むならジュースではなく、いつもお茶か麦茶である。

しかし、あっ!!

実はこの頃、ワインをサイダーで割って飲んでいた。

私はいつもビールのあとにワインを飲んでいるが、ビールのペースでゴクゴク飲んでしまうので、酒は回るわ翌朝喉にくるわで、割って飲む事にしたのだった。

大体1晩で500のペットボトルを2本。い、1リットルも飲んでいたのか。

しかもゴールデンウィークから飲み続けである。

エナメル質が糖で溶けかかってるそうな。

もう、なんて歯ってヤワなの!!

本当に手が掛かる野郎だ。希少動物か?

みんなそんなに歯を大切にしているか?

そんなにサイダー飲んでないのか?

「先生・・・、ぽ子さん、ワインを何で割ったらいいでしょう?」

奥さんは真面目に先生に聞いていた。

「そりゃワインなんか割らずに飲むのが一番うまいだろう。」

先生はそう答えた。真っ当な答えである。

「いえ、だからそのままじゃ強いから・・・。」

「う~~ん、みず、か。」

そりゃ歯の事を考えれば水でしょうがね、アルコールが入ってればいいってもんでもないですよ。

美味しく飲みたいですよって。

ちなみに歯に一番悪い酒はワインであった。

ジュースのワーストはコーラである。

糖分の少ないワインベースのカクテルを、これから調べるつもりである。

ないようだったら焼酎に切り替えることになるだろう。

せっかくワインの定位置を部屋に作ったのに。

奥さんが「いいですね。」と言ってくれるのはいつになるのだろうか。

そして、この歯医者通いに終わりはあるのだろうか。