人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

本当に来るのか?

その時私はゲームでスロットをやっていた。

ゲームというのはテレビゲームだが、スロットのゲームをやっていた訳ではない。

ドラクエだ。

ゲームのストーリー上、やらなくてはならなくなったので、やりたくないがやっていたのだ。

幸いボタンひとつで操作できたので、私は空いた方の手で雑誌を持ってそれを読みながらやっていた。

当たれば音楽が鳴るからわかる。

画面すら見る必要も無いのだ。

長い時間である。

目標のコイン数は結構なもので、それは果てしない道のりのように思えた。

コインは緩やかに減っては時々当たって少し増える、という状態を繰り返していた。

「お、スロット。」

そこで現れたのは娘ぶー子だ。

以前この作業が面倒で彼女に任せたことがあったが、熱中して引き際が悪いために、せっかく増えたものも減らしてしまう始末であった。

彼女は黙って隣に座ると、じっと画面に見入っている。

しかし黙っていたのはほんの最初のうちだけで、そのうち「お、いけるいけるいける・・・。」

「出る出る出る!!」とスロットに合わせて声を出すようになった。

ゲームのスロットである。

結論から言うとこのドラクエのスロットは、時間さえかければちゃんと増えるようにできているらしい。

つまり結果の分かっている無駄な時間を過ごしている訳だ。

ぶー子が出る出ると興奮しても、出ようが出まいが最後には増える算段なのだ。

なのにこの入れ込みよう。

私は少し驚いた。

「ホラ、○ボタン押して!!」

○ボタンなど使わないはずだが・・・。

「スロットが回ってる間に押すの!」

何で?

「当たりそうな気がするからッ。」

(汗)

そんな無駄な操作は増やしたくなかったのでやがて○ボタンを押さなくなったが、今度はぶー子が「ホラホラッ!!」とそのボタンを押すようになった。

一つのコントローラー二人で押しているのである。

しかも○ボタンは必要ない操作である。

しかしぶー子は毎度きちんと○ボタンを押しては「来るッ、次ぜってー来る!!」「オッシャ、次っ!!」とまくし立てる。

画面から目を逸らすことなく、毎回きちんと「オラ来る来る来る!!」と興奮している。

しかしコインは微妙に減り続け、目標数が少しずつ遠くなっていった。

「もうダメだよ・・・。減るばっかりでなかなか増えない。」とボヤくと、「3千までは大丈夫!!ぜってー増える!!」と吠える。

一体この根拠の無い自信は何なんだ?

「来た来た!!」にしろ、最初の1個を見ただけで「来た」と大騒ぎするのだ。

インチキ臭いギャンブラーそのものである。

そのうえ絵柄の「ドラキー」というキャラクターを「ドラッキー」と発声していてますます胡散臭く、コイツ大丈夫か?と心配になってきた。

果たして結果は、2日かけてスリーセブンを3回出してノルマを大きく上回ってクリアしたが、どの時もぶー子が「それじゃ」といなくなってすぐの事であった。

ぶー子には絶対にギャンブルをやらせてはいけない。

そう強く思ったのであった。

記念すべきスリーセブン。

コインが増えていくのがわかるだろう。