その時私はゲームでスロットをやっていた。
ゲームというのはテレビゲームだが、スロットのゲームをやっていた訳ではない。
ドラクエだ。
ゲームのストーリー上、やらなくてはならなくなったので、やりたくないがやっていたのだ。
幸いボタンひとつで操作できたので、私は空いた方の手で雑誌を持ってそれを読みながらやっていた。
当たれば音楽が鳴るからわかる。
画面すら見る必要も無いのだ。
長い時間である。
目標のコイン数は結構なもので、それは果てしない道のりのように思えた。
コインは緩やかに減っては時々当たって少し増える、という状態を繰り返していた。
「お、スロット。」
そこで現れたのは娘ぶー子だ。
以前この作業が面倒で彼女に任せたことがあったが、熱中して引き際が悪いために、せっかく増えたものも減らしてしまう始末であった。
彼女は黙って隣に座ると、じっと画面に見入っている。
しかし黙っていたのはほんの最初のうちだけで、そのうち「お、いけるいけるいける・・・。」
「出る出る出る!!」とスロットに合わせて声を出すようになった。
ゲームのスロットである。
結論から言うとこのドラクエのスロットは、時間さえかければちゃんと増えるようにできているらしい。
つまり結果の分かっている無駄な時間を過ごしている訳だ。
ぶー子が出る出ると興奮しても、出ようが出まいが最後には増える算段なのだ。
なのにこの入れ込みよう。
私は少し驚いた。
「ホラ、○ボタン押して!!」
○ボタンなど使わないはずだが・・・。
「スロットが回ってる間に押すの!」
何で?
「当たりそうな気がするからッ。」
(汗)
そんな無駄な操作は増やしたくなかったのでやがて○ボタンを押さなくなったが、今度はぶー子が「ホラホラッ!!」とそのボタンを押すようになった。
一つのコントローラー二人で押しているのである。
しかも○ボタンは必要ない操作である。
しかしぶー子は毎度きちんと○ボタンを押しては「来るッ、次ぜってー来る!!」「オッシャ、次っ!!」とまくし立てる。
画面から目を逸らすことなく、毎回きちんと「オラ来る来る来る!!」と興奮している。
しかしコインは微妙に減り続け、目標数が少しずつ遠くなっていった。
「もうダメだよ・・・。減るばっかりでなかなか増えない。」とボヤくと、「3千までは大丈夫!!ぜってー増える!!」と吠える。
一体この根拠の無い自信は何なんだ?
「来た来た!!」にしろ、最初の1個を見ただけで「来た」と大騒ぎするのだ。
インチキ臭いギャンブラーそのものである。
そのうえ絵柄の「ドラキー」というキャラクターを「ドラッキー」と発声していてますます胡散臭く、コイツ大丈夫か?と心配になってきた。
果たして結果は、2日かけてスリーセブンを3回出してノルマを大きく上回ってクリアしたが、どの時もぶー子が「それじゃ」といなくなってすぐの事であった。
ぶー子には絶対にギャンブルをやらせてはいけない。
そう強く思ったのであった。
記念すべきスリーセブン。
コインが増えていくのがわかるだろう。