7時16分のバスに乗れば駅で朝ご飯を食べられる。
次の7時38分なら家で食べると言うのだ。
必死こいて7時16分のバスに乗るに決まっているじゃないか。
ぽ子、頑張って早起きしてコーヒーショップのモーニングをゲット。
娘ぶー子の入学式である。
電車に乗ったら1時間20分。
絶対に寝てやる、と勇んで電車に乗り込んだが、武蔵野線は極寒の地であった。
外は桜が咲き乱れているというのに、凍死が怖くて眠れなかった。
しかし大学の講堂は打って変わってポカポカであった。
体育館の保護者席はすぐに一杯になってしまったので、入れなかった私達は講堂のスクリーンで式を見るのだが、シベリアの田舎駅を降りて、暖かい家に招き入れられた私達の目前のスクリーンの中で、延々挨拶や祝辞が繰り返される。
するとどうなる?
当然寝る訳だ。
一体あのつまらない話は、何歳になったら解放されるのだろうか?
教育者たちの悪意さえ感じる。
ダンナは今回も学長の話に感動していたが。
式が終るとすっかり外は暖かくなっていた。
武蔵野線にも春が来ていたが、もったいないので本を読んで過ごした。
銀座でカレーを食べ、乗り換えの新宿でブーツとの再会。
前に立川で見たのと同じブーツである。
あの時は値段もわからず衝動買いも気が引けたのでスルーしたが、再び出会ってしまったのだ。
値札を見ると六千円であった。
私の靴の相場は千五百円だ。
ぽ子の世界では、この千五百円は普通の人の三千円ぐらいのあたりに位置していて、決して安くはない千五百円である。
つまり六千円の値札が付いていると事は、私にとってはあなたの一万二千円ほどの値打ちがあるということである。
高いぞ。
「あんな靴履いたらジャイアント馬場になる。」
ダンナはやんわり反対した。
私の身長は165センチだが、そのブーツのヒールは軽く10センチはありそうなものだ。
でもただの馬場ではないぞ。
足が10センチ伸びるのだ。足の長い馬場である。
実は私の財布には一万円札が小さく折りたたんでカード類の間に挟んである。
九州の義母がくれたお小遣いである。
自腹で買うと思うと高いが、義母からのプレゼントだと思えばいいのだ。
あんなブーツに合う服がうちにあるのかちょっと頭をよぎったが、もうこうなったら誰にも止められない。
私はその馬場シューズを購入、ぶー子に9回に渡るメールでそれを報告、家に帰ってまずそれを履き、今夜の飲み会に履いていくことを決意した。
そう、これから送別会に行くのだ。
酒量を控えつつ、1次会のみですぐに帰ると宣言してあるが、誰もそれを信じてくれない。
ちゃんと帰ってきたら焼き鳥屋を1回プレゼントしてくれると言ったが、そんな事態には絶対ならないと思っているようだ。
なぜならもっともっと高額のプレゼントを賭けたが、どれもOKを出したのだ。
あんなに安請け合いして本当に私がちゃんと帰ってきたらしらばっくれそうなので、ほどほどのプレゼントをエサにしてもらった。
来週は焼き鳥屋に連れて行ってもらう。
アイシャルリターン。
私はここに無事戻るであろう。
では。