昨日と今日、外で出会った人の話である。
このふたりはちょっとした印象を私に残していったので、ここに書き残しておこうと思ったのだ。
昨日私は電車の中で夢中になってDSをやってたので、駅をひとつ乗り過ごしてしまったのだ。
次の駅で降り、反対側のホームに行き、戻る電車を待つ。
快速1本と急行1本が通過して行き、結構待つ羽目になってしまった。
根性ナシのぽ子は空いているベンチを見つけると、そこに腰を下ろして電車を待った。
やがて女性の二人連れが私の前に立った。
彼女らは私の事など気にも留めず、結構大きな声で話をしていたので、何となく注意を引かれてしまった。
仕事場の先輩と後輩、といった関係のようである。
20代半ばぐらいの女性と、先輩と思しき30代前半ぐらいの女性。
後輩の女性はモデルのようにきれいな人であった。
ベージュの品の良いコートの裾から、チェックの巻きスカートが揺れる。
その下には高そうなブーツ。
茶色がかった髪は綺麗にセットされ、お嬢さま風である。
彼女は隣の先輩に、何か仕事上のアドバイスを聞いているようであったが、とても熱心で、私が先輩だったらぜひ私が育て上げてやりたいと思った事だろう。
対する先輩は、ジーンズにスニーカーというラフな格好であった。
しかし野暮ったさはなく、細身の体にスリムのジーンズが映え、これはこれでおしゃれに着こなしているという感じである。
しかし私がこの先輩に違和感を感じたのは、アドバイスを乞われたその態度である。
彼女は左右の前ポケットに親指を突っ込み、上体を反らせて「ほう、ほう。」と相槌を打っていたのだが、小柄な先輩はスラッと背の高い後輩を見上げるような格好になっていた。
「ほう」という相槌といい、この美しく完璧な後輩を何とか高いところから見下ろしてやろうという本音が見えた気がして、滑稽であった。
時々ガクッと首をうなだれたかと思うとガッと長い前髪をかき上げたりするのもカッコつけててなお悲しい。
先輩は一通り話を聞くと、大きく身振り手振りを入れながら何やらアドバイスをしていた。
それがまた、野生動物が自分より大きな敵に対して体を膨らまして威嚇している姿を思わせ、かえって可笑しかった。
ちなみに顔はスッピンであったがハニワ系で、「先輩であること」以外に威張れるものは持ち合わせていないと思われた。
今日の人も、モデルばりの女性であった。
始発の久米川駅からバスに乗ったのだが、出発まで数分あった。
私とダンナは並んで座り、ボーッとしてバスが出るのを待っていたのだが、突然、前の方に座っていた女性が席を立ち、バスを出て行ったのである。
行き先を間違えたのか、何か用事を思い出したのか、気が変わったのか。
あまり良くあることではないが、気にするほどの事でもない。
ところが見るともなしに見ていたら、バスを下りた彼女が突然座り込んだので、目が釘付けになってしまったのだ。
その様子は「具合が悪くて座り込んだ」という感じではなく、単なる「ウンコ座り」である。
この女性も綺麗な人である。
昨日の子に比べると歳はいってそうだが、ゴージャスな服を着込み、化粧もビッときめたセレブ風であった。
叶姉妹的、と言えばわかりやすいか。
それがウンコ座りでアホ面しているのだ。驚いた。
しかしバスのドアは閉まり、お別れである。先が気になったが。
ところがゆっくりバスが動き出すと、二つ目のドラマが起こった。
ウンコ座りしていた彼女が凄い勢いでこっちに走りより、バスのドアを猛烈にノックしたのだ。
運転手は驚いてバスを止め、ドアを開けた。私達も驚いた。
彼女はシレッとして先程の席に座り、隣にバッグを置いて足を組んだ。
一体なんで外に出たのだろうか?
彼女は私達の斜め前に座っていたが、良く見るとフワフワのコートはフェイクっぽく、なぜかサインペンで書いたような汚れがあった。
ここまでで充分インパクトがあったのだが、
カツン、と何かが落ちる音がした。
バスがブレーキをかけた時である。彼女の体から何かが落ちた。
私の場所からはそれが何かは見えなかったのだが、このカツンはその後もう一度繰り返された。
普通、物を落としたりしたら、落ちないように工夫するはずである。
しかし同じ音がしたから、彼女は同じものを短い時間で2回続けて落としているのだ。
そして彼女の不気味さを決定付けたのはこの時である。
私には落としたものが見えなかったのだが、2度目に彼女がそれを拾い上げたとき、チラッとそれが見えた気がした。
気がした、と自信が持てなかったのは、それがあまりにもその場にそぐわない物だったからである。
それはナイフのように見えた。
いや、いっそナイフなら、恐ろしいがまだ分かる。
それは食事に使うナイフだったのだ。
何でそんな物がこの美人に携帯され、バスの揺れで落ちるようなところにあるのだろうか?
私はこの女性が気になって、それからは釘付けである。
そして気がついたのだが、彼女は手にライターを持っていた。
ライターと丸めたティッシュ。
もしかしたら、ヤケクソでこのバスを爆破するか誰かを刺そうとしてるのか?
それとも誰かからの指令か、そのコトの大きさに恐れをなして一度バスを降りたのか?
謎だらけである。
結局彼女より先に私達がバスを降りたので、後のことはわからない。
彼女の横を通るときに刺されたら嫌だったので、「見えませんよ、あなたには私達は見えませんよ」と、できるだけ目立たないよう、気配を消すように進んだ。
その後バスが燃えたような話は聞いてないから、きっと単なる「ちょっとおかしい人」だったのだろうが、怖い思いをした。
しかし怖かったが、どこかで何かがおきることを期待していた自分がいたことも否めない。
ブログをやってると、常にネタが欲しいのである。