ダンナの誕生日に合わせて「地雷ツアー」と称した旅行に出るようになったが、今回でこのタイトルを撤回したくなった。
地雷とは何ぞや、と考えた時に、これではあまりにも宿に対して、プランに対して、そして旅をプレゼントする相手に対して、何よりここまでプランニングした自分に失礼ではないかと。
しかしもはや恒例行事として定着し、「地雷ツアー」という音に愛着を感じているのも事実だ。
マイナス要素を「地雷だから」と包み込んでしまえる良さもある。そもそも、限られた予算でしみったれた旅をするのが目的だ。地雷上等、ウェルカム逆サプライズ。
ということで、やはり名称としてこの「地雷ツアー」というタイトルで続けて行こうと思う。
こんな前置きをしたのには、理由がある。今年の宿は、安いのにとてもいい宿だったからだ。
ただし、相当古い宿だ(笑)これをいい意味で、地雷としよう。
この宿を知ったのは、愛読している旅ブログがきっかけだ。
その古さがむしろ気になり、調べて見ると安くだけでなくなかなか評判のいい宿だったので、今年のツアーは宿から決定したのであった。
場所は、館山。
最寄り駅の新秋津から武蔵野線に乗り、南船橋で乗り換え。
そこから京葉線で蘇我、内房線に乗り換えて木更津で降りる。
どこかの乗り換え駅に停まっていた、面白い電車。
木更津で昼食をとることにしていたが、バスまで乗って行った市場の中のお店は大行列。
仕方なく、歩いて戻る途中にあるお店へ。
無駄足にしたくないので、写真だけでも。行きたかったのは、KUTTAというお店だ。
15分ほど歩いたが、知らない町を歩くのは楽しい。
古い煙草屋さん。
昼ご飯には、定食を一つ頼んでビールと単品を足す。ふたりだとこのスタイルがちょうど良いことが分かった。
しかしだよ、旅のテンションに酔いが加わり、気持ち良さ楽しさ倍増。電車を1本逃がし、後がなくなる。観光はなしだ(笑)
続けて電車で飲もうと、コンビニで缶サワーとおつまみを買い込む。
ところがやって来た電車は、二両編成の地元の生活密着型車両であった。とても酒など飲める雰囲気ではなかったが、車内に入ってみると一部は対面シートになっていてトイレまである。
幸い空いていたので対面シートを確保でき、隣の席に荷物を置いてのんびり飲み始める。
それにしても、どうやら乗客は地元の人間ばかりのようだ。プルタブを開けるプシューという音の似つかわしくないことよ。私達だけが、異質である。
君津で長時間の停車。少しずつ車内が混んできたので、荷物を網棚に上げて隣の席を空ける。
しかしこんな酒宴の席に隣り合わせたい人などいるかね、とタカをくくっていたが、車内は徐々に混み合っていき、私達の隣の席にも地元民と思しき人が座ったのだ。お陰ですっかり会話も無くなり、ほどなくしてダンナは没した。
残された私はただひとり飲むしかなくなったが、隣に真っ当な人間が座っていることにより飲みは進まず、深酒は免れた。
車窓より。
一駅ごとに、乗客は減っていくはずであった。
それでも隣人は、降りる気配がない。
私達が先に降りるなら、この状態で網棚の荷物を下ろさなくてはならない。
あまり早いと気まずいし、遅いとバタバタしてしまう。
ダンナが目を覚ましたところ、すかさず聞く。「館山の前の駅って何?」。「知らない。」
ネットで調べて見ると、「那古船形」。それはもう、次の駅であった。どうか次で隣の人が降りてくれますよう。
願い叶わず、隣は二人とも動かなかった。私は網棚の上が気になって仕方がない。狭いシートである。立ち上がろうとすれば、隣への影響は必至だ。
「館山まで何分ぐらいあるんだろう?」ダンナが知る訳がないが、荷物を下ろすタイミングで困っている事ぐらいは伝わらないか。
すると突然隣人は立ち上がり、通路の向こう側のシートに移動したのだ。
どうやら私達の会話で察したらしい。観光客との共存に慣れた振る舞いであった。私は感動し、感謝した。
館山着。
駅の上からリゾート感溢れる駅前を見下ろすと、頭の中でMaroon5の「Sunday Morning」が流れ出す。
そして、宿へと向かった。