なぜか、外飯運が悪いぽ子一家である。
それは承知してたから、今回ももしかしたらという予感はしていたが。
2軒ほど、出掛ける前にチャチャッとピックアップしてあったので、そこに向かう。
初めての店だ。
食い放題に行きたかったから、そのジャンルから選んだ。
Pink Big Pigなる、エンターテインメントカフェと銘打っているその50種のバイキングがあるという店は、どうやらこの頃新しくできたタイプの店らしく、一体どんな店なのか想像もつかなかった。
ダーツあり、ショーありと、とても派手で楽しそうな雰囲気である。
エレベーターで6階まで上がると、明かりが落とされた怪しくもワクワクするようなムードに包まれる。
昔通った「ディ」のつく4文字(職場でバカにされてるので控えめに書いた)のエントランスのようだ。
受付。
先にOL風の女性が二組並んでいて、私達はその後ろについた。
「ぽ子・・・。」
ダンナの声がしたので振り向くと、目でぶー子の方を見るように促す。
彼女は笑っていた。
ひとことで言うと「笑っていた」のだが、それは非常に複雑な笑みであった。
一見照れているようにも見えるが、「マジかよ」というドン引き的笑み。
「どうした!?ダメか、ここ??」
「いや・・・、別にいいけど・・・。」ニヤニヤ。
本当にいいと思っている人間は、「別に」などという言い方はしない。
何度か「やめるか?」「どうする?」とふってみたが、「もう1軒、候補がある」と言うとパアッと顔が明るくなり、「マジ?」と言ってOLの列から1歩引いた。
エレベーターを降りて、次の店に向かう。
「何がイヤだったの??」と歩きながら聞くと、「だって明らか年齢層が・・・。」とぶー子。
ちなみに今のぶー子のセリフはぽ子の脱字ではなく、この頃の女子高生の話し言葉の「明らか○○」と言う言い回しである。
「前にぶー子ぐらいの年の子が並んでたじゃないか。」ダンナが驚いて言うと、ぶー子は黙ってしまった。
・・・・・・・。わかった。すみませんね。
明らか私達の年齢層と合ってなかったのである。
「ごめんね。」ぶー子は笑っている。
まぁ屈辱的だが何となく気持ちはわかるから、「いや、アンタに恥かかせなくて良かったよ。」と言ったら、「その言葉が『ごめんね』だよ(泣)」と言った。
お~、美しい会話、完成。
さて次の候補は、コマ劇場から3丁目だ。
小雨が降っていたので、地下から移動する。
地下鉄で約ひと駅分だ。結構歩く。
こちらも初めての店だ。以前から気になっていた「食い飲み放題」の店である。
階段を上る。3階だ。
マンションである。
長い通路をつきあたりまで進むと、そこに店はあった。
扉が開いていたので入っていくと、
臨時休業
とあった。
こうしょっちゅうこういうことが続くと、「またかよ」と落胆はするが、それほどのダメージを負わず気持ちを切り替えることができる。
で、どうしよう??と言うと、
「東方見聞録♪」
ぶー子がニッコニコしながら言っている。
ラーメンと言うと「横濱家」、ゲームというと「(現在は)ぷよぷよ」、台場は「小香港」、マン喫は「POPEYE」。
本当にまたかとガックリ。
そればっかりなのだ、ぶー子は、気に入ると。
私はせっかくだから違う店に入りたいのだが、ぶー子の希望を聞くといつも一緒で、メニューもいつも一緒だ。
私は曖昧に返事をして歩き出したが、こうなったら行き先がないのだ。
「良さげな店があったら入ってみよう」で、入った試しがない。
クタクタに歩き疲れて、久米川の「庄や」コースである。
諦めて東方見聞録に入ったが、
いやぁ、やっぱり落ち着いていいお店ですねぇ♪
これだけ見ると高そうな店だが、普通の飲み屋にちょこっと毛が生えたぐらいである。
しかし、ほとんど個室。
ニャハハ、やっぱり来て良かったと思い、笑顔で乾杯したが、その笑顔が消えるまで、そう時間はかからなかった。
店、きれい。
店員、感じがいい。
料理、バツグンにおいしい。
しかし。
ムッチャクチャ注文が出てくるのが遅いのである。ムチャクチャ。
そう言えばこれまでも「遅い遅い」と何度も思ってきた。
でも今回はあまりにも遅すぎるのだ、全てが。
ゴールデンウィークだから仕方ないと言ってしまったらそれまでだが、こんなに遅いと知っていたら、ここには来なかった。
やっと届くつまみをピラニア状態であっと言う間に食べてしまうので、常に飢餓状態である。
あまりにも遅いので「もう帰ろう」と席を立とうと思うと、見計らったようにつまみが届く。
仕方なく食べようにも飲み物がないので、「せめて飲みものだけでもすぐに持ってきてもらえませんか?」と頼んで、やっとドリンクが届く。
こうして首の皮一枚で食いつなぎ、飲みつないだ。トミー・シュナイダー。
しかし、いい加減に堪忍袋の尾が切れて立ち上がった時に現れた天ぷらが、冷え切っていた。
これで完全に怒りの炎が立ち昇ったが、「冷めてもおいしいよ!」「どうしたらこんなにサクサクするんだろう!!」と必死にぶー子がその炎を消そうとしていたので、仕方ねぇ、今回はぶー子に免じて許してやる。
例によって、食い物が来ると飲み物がない。
もうサッサと帰りたいのでお茶を頼んだが、それが来たのはすっかり立ち上がって歩き出した時だった。
「もういいです(汗)」精一杯のクレームであった。
まぁそのお陰で飲み過ぎずに帰って来た。
だからゆっくり続きをやっている次第である。