RCサクセション、というと日本でもメジャーなバンドだと思うが、好きな曲は?と問えばその答えは様々なのではないだろうか。
先日私はふと、「Oh!Baby」のことを思い出したのだ。
19歳だった。
家を追い出され、自由になった喜びはあれどひとりで生きることへの不安も生まれていた。
半ば強制的に入れられた学校へはほとんど行っておらず、細々とバイトをしていたのだ。
面倒からとことん逃げ、将来を見据えることもせず、ただその日その日を生きるだけ。
結局私はひとりでなど生きられず、絶えず誰かに依存していた。
そんな時に聴いた「Oh!Baby」は、こんな風に誰かに愛されたい、という私の渇望だったのだろう。
「一緒に暮らそう、僕とふたりで」と優しい語り掛けで始まりながら、「僕を泣かせたいなら、夜更けに悲しい嘘をつけばいい」と悲しい旋律に変わる。
甘いのに、切ない不思議な調べ。
私が初めて聴いたRCは、「ハードフォークサクセション」という、まだアコースティック編成の時代のアルバムだ。
音数も少なく、シンプル過ぎると言ってもいい曲であるにも関わらず、私はどの曲にも衝撃を受けた。
ディスコグラフィを見ると、「Oh!Baby」がリリースされるのは、この10年後になっている。
その前後に「Summer Tour」や「ベイビー!逃げるんだ。」が発売されているところを見ると、もうかなりポップな路線に入っていた頃である。にもかかわらず、シンプルで小さな曲だ。もっと古い時代のものかと思っていた。
私の彷徨える暗黒時代、最後の頃。この曲にはその不安と辛さがしみついていた。
なぜか分からないけど、それがふと思い出されたのだ。
「好きな曲」だと思っていたけど、それは違う。私はこの曲に逃げていたのだ。
こんな風に愛されて、必要とされて、何の不安もなく生きていきたい。
嫌な歌を思い出してしまったよ。