15、6歳ぐらいの頃だったか。
門限を破ると家を閉め出されたので、行き場がなく、しょっちゅう友達と外をブラブラしていた。
面白いことは深夜に外を出歩いている時に起こるのだ。似たような友達に会ったり、見知らぬ人に声を掛けられたり。むしろ彷徨を楽しんでいた。
私達は声を掛けられると、ホイホイついて行ったものだ。今思うと恐ろしいが、変なことになったことは幸い一度もない。
だいたい奢ってもらったり、ドライブに連れて行ってもらったり、まぁ悪くて心霊スポットに連れて行かれたぐらいだ(笑)
その時も、道路沿いを友達とブラブラと歩いていた。すると黒いカマロが横に停まった。
なぜ私達が「カマロ」などという車種を知っていたのかは謎だ。当時はそこそこメジャーだったのか、後から聞いたのかもしれない。
声を掛けてきたのはもういい歳のおじさんだったが、あまりそういうのは問題じゃないのだ。この退屈から連れ出してもらえればいい。
おじさんは、紳士でも普通の人でもなく、どちらかというとチンピラみたいな感じの人だった。それでも優しくて、面白い。関西人だったような気がする。
「うちにおいでよ」おじさんは、言った。私達は言われるがまま、ついて行った。今思うと、本当に恐ろしいことである(笑)
着いた先はマンションだったかアパートだったか、とにかく部屋は散らかっていて雑然としていた。その中に、同世代と思しき若者が数人。男も女もいたと思うが、よく覚えているのは、赤ちゃんを抱いている若い女の人がいたことだ。
彼らは思いがけない客にちょっと驚いたが、快く迎えてくれたように記憶している。居心地が良かったかどうかは別だが。
一体どういう集まりなのか。気になることは色々あっても、聞くことはためらわれた。
何となく、彼らは家族ではない、はぐれものの集まり、そんな気がしたのだ。
しかしそういった人が、そういった人にだけ見せる優しさ、そんなものを感じる。
映画「万引き家族」を観た時、ふと彼らのことを思い出した。
愚かで、不器用で、どこまでも純粋。
結局何をするでもなく、ただ喋って帰ってきたような気がする。その後、会うこともなかったから、彼らもそれ以上私達と深入りする気はなかったのだろう。
ほんの束の間通り過ぎただけの、彼らの部屋。
あのような、世の中から忘れ去られている部屋は、今でもどこかにあるだろう。
想像すると、何とも言えない切ない気持ちになる。