母のお墓の中には、母の骨と、叔父、祖父、祖母の骨が入っている。
中はきっと真っ暗でジメジメして、とても静かだ。
母の残骸は、そこにある。しかしもう、母はいない。それは残骸でしかない。
人は死んだらどうなるのか。
私は無宗教だしスピリチュアリストでもないが、この頃は「魂に返る」だろうと強く思うようになった。母と2匹の猫を看取り、自然にたどり着いた結論だ。
体は有限だ。消耗品であり、壊れやすい。
その中に魂は宿る。
どんな体も欠陥品だ。未熟で、自己中心的で。
許しがたいあいつも、そんな欠陥を持った肉体であるだけで、そこに入った魂さんはお気の毒様、というだけのことだ。そう思うと、死者には優しくなれる。
魂は、肉体と言うハンデを背負って人生を全うするのだ。
私自身も、この私の欠陥に苦しめられている。もっと上手に生きたいものだけど、私と言う肉体は怠惰で自分に甘く、何事をも成し遂げられないようにできているらしい。
終わらない戦いだ。
今日こそはと目覚め、今日も駄目だったと眠る。
こんな体も、いつかは死ぬのだ。魂は、重い鎧を脱ぎ捨てる。
私の周りには、「死んだら無になる」と考えている人が圧倒的に多い。
答えがないのだからそれも否定の仕様がないが、科学的に証明できないことはあり得ない、というのではあまりにも極端ではないだろうか。
こんな未熟な肉体が考え付くものが、果たして「全て」なのか。
本当はもっと世界は広く、肉体に縛られてそれを忘れているだけなんじゃないか。
母と猫の死は、私にそれを教えてくれた。
そんな気がしている。
つまるところ、墓なんてゴミ箱だ。
「そこに私はいません。」
魂の帰る場所。それはどんなところなんだろうか。
「分からないから楽しみなんじゃないか!」
バンド仲間は言った。