「テロ」ということに対して、日本人は関心が薄い。その脅威にさらされる危険が極めて低いからだろう。
オウム真理教の事件を「テロ」と分類されているが、どうもピンと来ない。
やはりテロとは、ターバン巻いたヒゲヅラが、無差別殺人を起こすイメージである。そしてそれは、自分と遠い所にあった。
イラクで何が起こっているか、なぜアメリカが介入したのかなど、同じ時代に生きながら私にはさっぱり理解できなかったし、そもそも興味もなかったのだ。
本書は、最恐最悪と言われたテロリストザラカウィの生まれから、その流れを辿っていく。
そもそもは、ただのチンピラだった。
しかし非常にタチの悪いチンピラで、手を焼いた母親がイスラム教の教会に通わせたのだ。
そこでイスラム教に目覚めたザラカウィは敬虔な信者となったが、どんどんとのめり込んでいき、極端なまでに傾倒していった。
資本主義、西洋文化などは悪でしかなく、排除すべきもの。どんな力を使ってでも。どんな方法をとってでも。アッラーの名のもとに、それは聖戦と呼ばれた。
ザルカウィはどんどんと過激になっていく。
「ビン・ラディンを超える。」アメリカの同時多発テロを起こしたアル=カーイダの創設者を常に意識し、ついには史上最悪級のテロを画策。
ヨルダンで7万人に死者が出ると推測されたこのテロは、実行前に阻止され、未遂に終わる。
ザラカウィの落胆は大きい。
そんな彼が新たに考え出した手法は・・・。
読みにくいです(笑)
句点までが長く、登場人物の多さ、組織名、耳慣れない固有名詞が多いので頭がこんがらかってくるのだ。翻訳による書き方も、本文に忠実なため分かりにくい。
捜査官、被害者、テロリストひとりひとりにスポットを当てて丁寧に掘り下げているので、情報量も多い。
また、ヨルダン、イラン、イラク、イスラエルなどの関係や情勢などの背景が分からないので、なかなか情報が頭に残りにくい。
なので果たして自分がどこまで理解できているかは疑問だが、今までほぼゼロだったあっちらへんのことを学ぶことができたと思う。
テロリストはなんであんな残酷なんだろう、よほど血に飢えているのか暇か!ぐらいに思っていたが、彼らにはそれは「聖戦」であること、その思考には衝撃を受けた。
また、アメリカは正義でもない、という部分も垣間見えている。
解放と言う名のもとにイラクに介入したが、その現実も、この本は伝えている。
さて、ザラカウィは新しい手法で世界を恐怖に陥れることに成功した。
日本人の被害者もいて、冒頭に日本の読者に向けて著者の序文があった。
ザラカウィの、イスラム過激派のその後は。
下巻に続く。
ぽ子のオススメ度 ★★★☆☆
「BLACK FLAGS(上)」 ジョビー・ウォリック
白水社